人は自分の幸せを予測するのが苦手
ハーバード大学で心理学を研究しているダニエル ギルバート博士によると、「人間は自分の幸せを予測するのが苦手なので、自分が好きで選んだはずの仕事でも作業をしている途中で嫌気が指してしまうことが多い」のだそうです。
つまり、ただ作業が好きという気持ちだけで仕事を選んでしまってはあとあと退屈になって仕事選びに失敗する可能性も高いということです。好きなことを仕事にしても楽しくなかったりうまくいかないのはこのためです。
好きだと思ったけど好きじゃなかったことはよく起こる
自己啓発本では「好きなことを仕事に」というアドバイスがよくされていますが、ただその作業が好きという気持ちを基準に仕事を探しただけでは自分に合った仕事はなかなか見つからないものなのです。
そこで博士は仕事を好きになるために次のようなアドバイスをしています。就職活動中だったり転職活動中の人は、仕事を選びの参考にしてみてください。
また、働き方改革に取り組んでいる人は新しい働き方の参考にもなるので目を通してみてください。
仕事の満足度を決める4つの大きな要素
ギルバート博士によると心理学的に仕事の質を決める四大要素というものがあり、この4つの条件を満たすことで仕事に対する満足度を上げることができます。
- 自分の意思で行動できること
- 社会の役に立てること
- 他者との繋がりを感じられること
- 能力の成長を感じられること
博士はこれらの性質をまとめて職人気質と呼んでいます。中には過去に紹介した心理学研究でも言われていたアドバイスが載っていますね。
それではそれぞれの働き方ポイントを順番に見ていきましょう。
自分の意思で行動できること
自立性の高い職場環境で、自分の裁量と意思で仕事ができる人ほど仕事の満足度が高く、高い成果も出しやすいということがわかっています。
自分の裁量で行動できる範囲が広いとストレスが溜まりにくく、仕事自体にも意義を見出しやすくなるのです。自分で選んで自分の考えで行動しているのだからと、仕事や顧客に対しても一生懸命に尽くせるようになるのですね。
私たちは誰かから命令されたことには心理的な抵抗感が生まれてしまい、そのせいでやる気も出しにくくなってしまうのですが、自分から進んでやることにはたとえ周りの人から意味のないことだと低い評価をされていても勝手に体が動いてしまうものなのです。
社会の役に立てること
次に大切なことは、その仕事をすることによってどれだけ社会に貢献ができているかということです。
誰かにために働き、社会に役に立っているという感覚が得られる仕事をこなすことで、私たちは幸福を感じます。自分の利益のためだけに働くのは心理的によくないのです。
そして人のために尽くすことは自分の心にとってプラスなのです。情けは人の為ならずという言葉がありますが、このことわざは心理学的にも正しいのですね。
人間は社会的な動物で、誰かの役に立ちお互いに支え合うことで長い時代を生き延びてきました。この生物的な淘汰の軌跡が遺伝子の中に組み込まれているので、人を幸せにすることで自分も幸せを感じられるように進化してきたのです。
だからこそ、誰かのために働くことで私たちは幸せを感じられるのです。もう一度繰り返しますが、「情けは人の為ならず」なのです。
他者との繋がりを感じられること
仕事というのはただ報酬を得るためだけに行うことではありません。
仕事をすることで私たちは他者と関わり、多くの優しい人たちと繋がることで安心感や安全を手に入れています。
先ほどの社会貢献の話と同じように、この「人との繋がり=安全」というイメージが遺伝子に組み込まれているので、親しい人や好きな人とコミュニケーションを取ることで私たちのメンタルは安定するのです。
もちろん、職場の人との繋がりはストレスの元にもなりますので、心理的にも健康な人間関係を構築できるように努力したり、職場環境を選ぶ必要はあります。
特に仕事のストレスのほとんどは邪悪な人間関係が原因になっているので、職場選びのポイントに人間関係の質が良いことという条件は入れておきましょう。
能力の成長を感じられること
やっぱり何はともあれ、仕事面でも人として成長することは大切です。私たちは成功することも好きですが、成長することはもっと好きなのです。
特に成長が大切なのは、「努力をしても成功は約束されていないけれど、成長は誰にも約束されているものだから」です。たとえ成し遂げたことが他人に自慢できるものような結果ではなくても、自分にとって素晴らしいと思える進歩や成長を遂げることが一人一人にとってはより重要です。
お金持ちになれる人には限りがありますが、幸せになれる人には限りがありません。幸せのカタチは無限大であり、その一つが自分の成長を実感できることなのです。
挑戦することで幸福度を上げることができる
成果や進歩が小さなものでも成長を感じられることで私たちは幸せになれるので、新しいスキルの習得や新規事業への挑戦、これまで知らなかったことを発見し、新しい人間関係を築いていくことで仕事の満足度を高めることができます。
これとは逆にいつまでも同じことを繰り返しているだけでは、何の達成感も得られずかえって心が病んでしまうのです。注意しましょう。
というわけで、今回の研究を見てきた通り、仕事の満足度を決めるのはどんな分野の仕事をするかではなく、どのように働くのかが重要なポイントとなっています。
理想の仕事を探すよりも理想の働き方をつくる方が大切
そして現実的なことを考えると理想の仕事がいつでも手に入るとは限らないので、まずは理想の働き方をする方が心理学的には大切です。
理想的な働き方がどんなものを理解し身に付けることができれば、時代が変わり仕事のニーズが変わり、その過程で別の仕事に就いたとしても満足が得られる仕事をこなすことができるようになります。
最初から自分の理想の仕事というのはわからないものなので、働き方に目を向けることがこれからの時代には重要なことなのです。