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幸福度とポジティブな気分を高めるセイヴァーリングを心理解説【おすすめ】

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ポジティブ心理学のテクニック、セイヴァーリングとは?

 

今回は、以前に幸せになるための心理戦略の一つとして紹介したセイヴァーリング(セイバーリング)のテクニックについて、より詳しい解説をしていきます。

 

セイヴァーリング(味わうこと)は、ポジティブな経験や感情を強めたり、持続時間を延ばしたり、評価を高めるために役立つ思考や行動です。

 

つまり、セイヴァーリングをすることで、ポジティブな経験や感情がもたらす利益を最大化することができるのです。

 

ポジティブの敵、ダンパニングとは?

 

セイヴァーリングの反対の心理用語は、ダンパニングと言います。

 

ダンパニングは、ポジティブな感情を悪いものとして感じようとしたり、ポジティブな感情を弱めようとする行為、または思考のことを指します。

 

自分がわざと幸せから遠ざかることをしているようでしたらダンパニングをしている可能性があるので注意してください。

 

 

セイヴァーリングの効用

 

セイヴァーリングは、ロヨラ大学の社会心理学者フレッド・ブライアント博士によって生まれた概念です。

 

ブライアント博士は、「セイヴァーリング」を、ポジティブな出来事が起きた時の自分の感情を意識し、心を込めて関与することとしています。

 

ポジティブな出来事や感情に自ら積極的に関わることで、短期的にも長期的にも幸福度を高めることができるというわけです。

 

つまり、セイヴァーリングは単にポジティブな感情を体験するだけではなく、ポジティブな体験を長続きさせるため方法でもあるのです。

 

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セイヴァーリングの3つの基礎

 

セイヴァーリングには、次の3つの形態があります。

 

  • (未来に)期待する:将来に起こるポジティブなイベントを楽しんだり、ポジティブな出来事が起こるのを期待すること。

  • (現在に)浸る:現在のポジティブな体験を増強することによって、ポジティブな体験を長く味わうこと。また、いま瞬間に浸ることでポジティブな体験を後で思い出したときにも、より強い記憶になる。

  • (過去を)思い出す:過去のポジティブな記憶を呼び戻して再体験することで、ポジティブな感情を味わうこと。

 

現在に意識を集中するマインドフルネスと違って、過去や未来の時間軸にも応用できるのがセイヴァーリングの特徴です。

 

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セイヴァーリング効果を高める4つの方法

 

セイヴァーリングの効果を促進するための4つの戦略を紹介します。

 

  1. 行動で示す:非言語コミュニケーション(顔の表情、顔色、視線、身振り、手振り、体の姿勢、相手との物理的な距離の置き方など)を使ってポジティブな感情を表現する

  2. 今この瞬間に集中する:現在起こっているポジティブな瞬間に意図的に、注意を払って焦点を合わせる。

  3. ソーシャルキャピタライジング:他の人とポジティブなコミュニケーションをとる。

  4. ポジティブ・メンタル・タイム・トラベル:過去または未来に焦点を当て、ポジティブな出来事を思い出したり、期待したりする。

 

上記のように、セイヴァーリングはただ一人で行うものではなく、人付き合いを含めて他者とのやりとりにも注目します。

 

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残された人生を意識する

 

年齢はセイヴァーリングと直接関連していませんが、10代の若者であっても残りの人生を意識することでより深く自分の人生を感じられるようになり、主観的な幸福感を増やすことができます。

 

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セイヴァーリングが得意な人、苦手な人の特徴

 

経験を味わう傾向と性格スタイルには関係があります。

 

休暇をどれだけ楽しめるかに関する研究によると、タイプA(せっかち)の人は、タイプB(のんびり屋)の人ほどセイバーリングが得意ではなく、このせいで休暇の楽しみが損なわれてしまうことがわかっています。

 

せっかちな人は、将来につながるポジティブな感情を味わうことよりも、今この瞬間の成功を楽しむ傾向があり、仕事や勉強に関することを何もしていないと焦ってしまいます。心当たりがある人も多いかと思います。

 

一方で、のんびり屋な人はより休暇や自由な時間を大いに楽しむことできます。

 

裕福な人はセイヴァーリングが苦手

 

これまでの心理学の研究では、幸せはお金で買えないとされていますが、セイヴァーリングに関しても同じです。

 

ジョルディ・クオイドバッハ博士らによる最近の研究では、裕福な人ほどセイヴァーリングの能力が低いことがわかっています。

 

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お金が人生の楽しみを阻害する

 

さらに、お金や富を連想させるようなものにさらされだけでも、私たちは人生の楽しみを損なってしまうようです。

 

実験で富を連想させるもの触れた参加者は、チョコレートを味わうのに費やす時間が少なく、チョコレートを味わい、楽しむことが少なくなってしまいました。

 

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自尊心が低い人はセイヴァーリングが苦手

 

お金のほかには、自尊心がセイヴァーリングや感情の調節能力に影響することがわかっています。

 

ウォータールー大学の研究によると、自尊心が低い人はポジティブな経験を味わうことが少なく、気分が良いときには感情を抑えてしまう傾向があることがわかっています。

 

またこの研究では、逆に、自尊心が高い人ほど、自分の成功を楽しみ、祝い、噛み締めることができるという傾向も見つかっています。

 

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セイヴァーリングで頭も良くなる

 

バーバラ・フレドリクソン博士の提唱する拡大構築理論(2001年)によると、ポジティブな感情を持つ人は、社会的、感情的、心理的な幸福度が高くなることがわかっています。 

 

このフレドリクソン博士の研究では、ポジティブな感情は、心理的な回復力と感情的な幸福度を向上させるほか、ネガティブな感情を打ち消して、思考力や行動力をも広げる作用があることも発見されています。

 

つまり、セイヴァーリングによってポジティブな感情を持続時間を延長することができれば、幸せになれるだけではなく頭も良くなるのです。

 

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セイヴァーリングでうつ傾向が緩和

 

ポジティブ心理学の専門家であるマーティン・セリグマン博士の研究によると、セイヴァーリングはうつ病の治療にも役立つことがわかっています。 

 

セイヴァーリングが持つ、絶望感を軽減し、ポジティブな感情を増加させる効果がうつ病を持つ人にも良い影響を与えるのです。

 

セイヴァーリングで人間関係が改善

 

また、セイヴァーリングを行えるようになることで、私たちはより強い人間関係を構築できるようにもなります。

 

リエージュ大学の研究では、顔の表情などの非言語的な行動表示によってポジティブな感情を長引かせること、注意を集中させることによって意識的にポジティブな体験に参加すること、ポジティブな体験を他の人とお祝いしたり話し合ったりすること、この3つの戦略によってポジティブな感情や体験を活用することができるとわかっています。 

 

  • ポジティブな感情を表情や行動で示す

  • 意識的にポジティブな体験に参加する

  • ポジティブな体験を他人と祝う

 

これらの戦略を使うことで、人間関係を構築したり改善したりすることができるのです。

 

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セイヴァーリング能力を高める方法まとめ

 

  1. 他の人と自分のポジティブな感情を共有する
  2. いまこの瞬間を鋭く意識を集中して、後から思い出すつもりで心に焼き付ける
  3. 現在の瞬間に注意を向けて感覚を研ぎ澄ます
  4. もっと悪い出来事と比べる
  5. 夢中になる
  6. 感謝や恩義の数を数える
  7. 物事の明るい面を見て、気分がしらけるような思考を避ける
  8. ポジティブな表情を作って相手にポジティブな気持ちを伝える
  9. 時間はあっという間に過ぎるということを思い出す

 

セイヴァーリングを行う際は、これらの戦略を組み合わせることでより高い効果を発揮できます。

 

ポジティブな感覚に意識を集中させるセイヴァーリングは、私たちの幸福感を育てて大きくする効果を持っています。ぜひ試してみてください。

 

参考論文

 

Smith, J. L. & Bryant, F. B. (2012).Are we having fun yet?: Savoring, Type A behavior, and vacation enjoyment.International Journal of Wellbeing, 3(1), 1-19. doi:10.5502/ijw.v3i1.1

https://doi.org/10.5502/ijw.v3i1.1

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https://www.researchgate.net/publication/261474280_Type_A_Behavior_Pessimism_and_Optimism_Among_College_Undergraduates

Bryant, F.B., Smart, C.M. & King, S.P. Using the Past to Enhance the Present: Boosting Happiness Through Positive Reminiscence. J Happiness Stud 6, 227–260 (2005).

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Ramsey MA, Gentzler AL. Age differences in subjective well-being across adulthood: the roles of savoring and future time perspective. Int J Aging Hum Dev. 2014;78(1):3-22. doi: 10.2190/AG.78.1.b. PMID: 24669507.

https://doi.org/10.2190%2FAG.78.1.b

Type A and Type B Personality Theory | Simply Psychology

https://www.simplypsychology.org/personality-a.html

Quoidbach, J., Berry, E. V., Hansenne, M., & Mikolajczak, M. (2010). Positive emotion regulation and well-being: Comparing the impact of eight savoring and dampening strategies. Personality and Individual Differences, 49(5), 368–373.

https://doi.org/10.1016/j.paid.2010.03.048

Paul E. Jose, Bee T. Lim & Fred B. Bryant (2012) Does savoring increase happiness? A daily diary study, The Journal of Positive Psychology, 7:3, 176-187, DOI: 10.1080/17439760.2012.671345

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Jordi Quoidbach, Elizabeth W. Dunn, K.V. Petrides, Moïra Mikolajczak (2010) Money Giveth, Money Taketh Away: The Dual Effect of Wealth on Happiness, Psychological Science

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