嫌なことは紙に書いたほうがいい
2012年におこなわれたスペインのマドリード自治大学心理学部のパブロ・ブリニョール、マルガリータ・ガスコ、ハビエル・オルカホ、オハイオ州立大学のリチャード・ペティ博士らの研究によると、嫌なことを紙に書いて破り捨てるだけでも嫌な記憶を忘れる効果があることがわかっています。
嫌な出来事を紙や日記に書くと良いというのは過去に行われた数々の実験で証明されていますが、破り捨てると効果的というのはユニークな部分ですね。
紙を破り捨てると気分が良くなる
実験では、まず高校生の被験者たち83人を対象に、自分の身体についての嫌いなところを紙に書いてもらいました。その後で、彼らにその紙をビリビリに破いてゴミ箱の中にポイッと捨ててもらったのです。
「たったそんなことで?」と思うかもしれませんが、実際にこの作業を行った人たちは自分を責める傾向を減らすことができたことがわかりました。
誰にでもコンプレックスの一つや二つはあるかと思いますが、この方法を使えば長年の悩みがなくなったり軽減するかもしれません。考えてもしょうがないことには物理的な介入が役に立つみたいですね。

頭の中でイメージするだけでは効果なし
しかし一つ注意が必要でして、頭の中で嫌なことを書いた紙を破り捨てたり、パソコン内のデジタル文書を消去しただけでは効果がなかったのです。
本当に嫌なことを忘れるためには、現実に存在する紙に悩みや不安に思うことを書いて、実際にそれを自分の手でビリビリと破り捨てることが重要なのですね。楽をして、ただ脳内でイメージするだけではダメなのです。
またもうひとつ重要なこととして、研究者は、紙を捨てるだけで幸せになれるわけではないとも忠告しています。
当然ですが、ツラい出来事を紙に書いて破り捨てても、その嫌な記憶や思考は完全にあなたの記憶の中から消えたわけではなく、あなたが思い出そうとしたりきっかけがあれば、まだいつでも思い出せる状態です。
なので、スマホやパソコンのように特定のデータだけを選んで削除して、「はい、完全に消去」というわけにはいきません。

考えがまとまらないときは紙に書く
しかし、それでも少なくとも、紙を破り捨てることで一時的にネガティブな思考を忘れて、悪影響を少なくさせることはできます。
根本的な解決方法にはならないのですが、速攻で悪い気分を晴らしたいときの対処法という感じですね。
考えてもうまくまとまらない抽象的な思考は、紙に書き出して目に見える化してあげることで、脳みそが処理しやすくなるので、いつまでも悩むことが無くなるのです。
頭の中で考えているだけでは不安な気持ちは発散できず、かえってモヤモヤが長く残ってしまいます。しかし、嫌な出来事とネガティブな感情の両方を紙に書き出すことで陰鬱な気分が解消し、人生の満足度を高めることもできます。少しの工夫でネガティブな出来事はポジティブな結果に変えられるのです。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) April 21, 2020
練習を繰り返すことでネガティブに強くなる
最後に一番の朗報なのですが、実験で嫌な思考を紙に書く練習を繰り返してもらったところ、ネガティブな思考をすぐに消す能力が鍛えられたこともわかりました。
つまり、ネガティブになりやすい人や落ち込みやすい人は紙に書いて破り捨てることを繰り返すことで、それがネガティブな思考の処理をする訓練になって悩みづらい性格になるということです。悩み事を抱えやすい体質の人はぜひ今回のテクニックをお試しあれ!

参考論文
Briñol, Pablo, et al. “Treating Thoughts as Material Objects Can Increase or Decrease Their Impact on Evaluation.” Psychological Science, vol. 24, no. 1, Jan. 2013, pp. 41–47, doi:10.1177/0956797612449176.