くるくるちょろちょろ心理学研究所

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正しいことを言う政治家が信頼されない心理的な理由

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正論を言う人は信頼されない?

 

ポリコレ、ポリティカルコレクトという言葉があります。

 

「政治的に正しい」という意味ですね。多様性を認める文脈で使われたり、リベラル派がよく使う言葉でもあります。

 

これは、マイノリティーの人たちや貧困に苦しむ人たち、差別される人たちを救うために使われますが、こうした発言が時に問題を起こすこともあります。

 

実は最近行われた心理学の研究によると、「ポリコレ的な発言をする人たちは信頼性が低い」という結果が出ています。

 

今回紹介するのは、2020年に行われたカリフォルニア大学バークレー校のジュリアーナ・シュローダー、マイケル・ローゼンブラム、ハーバード大学のフランチェスカ・ジーノ博士らの実験です。

 

 

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政治的な発言をする人を評価した

 

これは4,956人を対象にした実験で、まず最初に集めた実験参加者の人たちにスピーチの原稿を見せて、その内容を聴衆に伝えようとする政治家の姿をイメージしてもらいました。

 

スピーチの中身はトランスジェンダーと移民政策に関するもので、それぞれ政治的に正しいポリコレのものと、逆に偏見が入った内容が用意されました。

 

原稿の中身は次のようなものです。

 

ポリコレの原稿「LGBTQの人たちは社会の中で最も不利な立場にあり、彼らを守るために全力を尽くさなければならない」

 

差別的な原稿「LGBTQの人たちは、自分のジェンダー・アイデンティティについて混乱していることが多い」「正式に登録されていない移民は不法滞在者である」

 

といった感じですね。

 

正しいことを言う人は信頼されにくい

 

そしてその後、その原稿内容でスピーチする政治家に自分がどのような印象を持ったかを尋ねたのです。

 

すると、ポリコレなスピーチを読んだ人たちは、「この政治家は温厚だが、信頼はしにくい」と評価する傾向があったのです。

 

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好みや政治的思想に関係なく評価が下がった

 

意外にも、この傾向は、スピーチの内容を本人が好きか嫌いか、保守派かリベラル派かに関わらず、すべての実験参加者の間で一致していたのです。

 

 

個人の政治的思想に関わらず、ほとんどの人々は同じような反応を示し、ポリコレ的な発言をする政治家は基本的に信頼度が下がるという結果でした。

 

全体的には、リベラル派だろうと保守派だろうと、ポリコレ的な発言をする人は信じられにくいのですね。

 

さらに、現実の政治家が実際に行ったスピーチ原稿を見せた場合でも、同じくポリコレ的な内容だと信憑性が低いと評価されてしまいました。

 

なんかちょっとショックな結果ですね。

 

極端な思想家は都合が良い発言だけを信じる

 

ただし、極端な保守派・リベラル派の場合は反応が異なり、保守派が自分たちの所属するグループに対する悪口(白人を田舎者、キリスト教徒を聖書バカと呼ぶなど)を言われた場合は、ポリコレの政治家を支持し、逆にリベラル派はポリコレの政治家を信頼できないと評価を下げました。

 

つまり、極端な政治思想を持っている人は、「自分たちに都合の良い言葉だけを信じる」という傾向があるようですね。

 

リベラル派であってもポリコレを否定する場合があるのは興味深いですね。

 

正しいことを言う人が信頼されにくい理由

 

研究者によると、政治的に正しい演説をする政治家は、後で意見を変えそうだと思われやすかったようです。

 

正しいことを言えばいい!というわけではないみたいですね。

 

このような心理が生まれる理由は、ポリコレ的な発言をする人は弱そうに見えるからです。有権者から見たときに、ポリコレ的な政治家は政敵に言い負かされて心変わりをしそうと思われてしまうのです。

 

あまりに綺麗事ばかり言っていると、何となく嘘っぽく聞こえてしまう心理と似ています。

 

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差別的な人は正直に見える

 

一方で、差別的で政治的に正しくない言葉を使う政治家は、冷酷に見えますが、嘘をつかない正直者に見えるという印象を与えていました。

 

トランプ大統領とか、そのまま本音を話している印象が持たれやすいですよね。強い言葉を使う人ほどそういう信念を持っていると思われやすかったのです。

 

確かにトランプ大統領も元々はリベラル派で民主党員でヒラリーの支援者でしたけれど、今は根っからの保守派に見えますものね。

 

 

差別的な人は説得されにくく見える

 

そんな感じで、どうやら私たちには差別的な発言をする人は正直に見え、強い態度を取っているので説得されにくく見えるという心理があるようです。なので、その分信用されやすいのです。

 

似たような心理で、言葉が汚い人ほど嘘をつかないというものをありますので、やはり汚い言葉や強い口調の人はリーダーとして大衆から信頼されやすいようです。

 

政治的な問題がなかなか解決されない裏には、こんな心理があったのですね。難しい問題です。

 

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ポリコレ派は信頼されないが、実力はある

 

しかし、最後に面白い結果が出ています。

 

参加者の人たちにポリコレな発言、非ポリコレな発言を使って、黒人教会への補助金に関する政治討論をしてもらったところ、「ポリコレな発言をする人はうまく言いくるめられたと相手に見られたのですが、実際には相手をより多く説得できた」という結果になったのです。

 

何という複雑な心理でしょう笑。ポリコレ的な発言をする人は弱々しく見える一方で、実際には差別的な人よりも人を説得することに成功しているのです。

 

そう言えば、現実でもバイデン氏が勝利しましたしね。

 

ただ全体的に見ると、ポリコレ派は結果は残していても評価はされない、という感じですかね。うーん、悲しい。

 

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参考論文

 

Rosenblum, M., Schroeder, J., & Gino, F. (2020). Tell it like it is: When politically incorrect language promotes authenticity. Journal of Personality and Social Psychology, 119(1), 75–103.

https://doi.org/10.1037/pspi0000206