2つの脳の仕組みについて
今回は普段の暮らしの中で心を強くしていく方法について解説していきます。
まず心を強くするために簡単な脳の仕組みについて知っておきましょう。
私たちの脳みそは、デフォルトモードネットワーク(DMN)とセントラルエグゼクティブネットワーク(CEN)と呼ばれる2つの状態を交互に使い分けてます。
DMNとは?
DMNでは、私たちの心はさまよい、様々な思考や感情が思い浮かびます。デフォルトとあるように、これが普段の状態です。
例えば、会社に向かって歩いているときにはいろんなことを考えるでしょう。あるいは、他の日常的に慣れた行為をするときも同じです。
私たちはひとつのことに集中することなく、同時にいろんなことを思い、感じ、実行しています。
CENとは?
もうひとつのCENでは、ひとつの物事に集中し、別の思考や感情は浮かびません。簡単に言うと、集中している状態です。
例えば、仕事のプレゼンでは練習通りに事が運ぶように他のことを考えたりしません。
あるいは、好きな人の前ではその相手のことに集中し、他のことは考えません。これがCENです。
心を鍛えていくうえで重要なのは、このCENの時間を普段の生活の中でできるだけ増やすことなのです。
CENは心を強くする
研究によると、DMNをシャットダウンし、CENを活性化させるとストレスに強くなることがわかっています。
これを意図的に行っているのが瞑想です。なので、心を強くするうえで最も効果的なのは瞑想をすることなのですが、瞑想を続けることはそれほど簡単なことではありません。
そこで、今回は瞑想に近い状態をつくるためのより簡単で日常的な方法について紹介していきます。
ポイントは、DMNを不活性化し、CENを活性化させることです。そうすることで、瞑想をしていなくても、瞑想と同じ効果を生み出すことができます。
目の前に一点に集中する
私たちは、日常生活の43%もの時間を、何か他のことを考えながら行動しています。
別の言い方をすれば、多くの作業をDMN状態でこなし、集中できずにいるのです。
このように意識がどこか上の空にある状態では、様々な不安や悩みが思い起こされてしまい、メンタルは弱くなりがちになります。
そこで、日常的な作業をするときは、焦点をひとつのところに向けることで、積極的にDMNの声を沈黙させましょう。
例えば、お風呂に入っているときはシャワーの温水の感覚、食事をしているときはご飯の味、散歩をしているときは空の色や鳥のさえずりなどに意識を集中するのです。
話を聞いているときは何もしない
私たちは人の話を聞いているようで聞いていません。つまり、会話の最中もDMNになっているのです。
この状態では、相手の話は何となく聞こえますが、同時に自分の心の声も聞こえてきてしまいます。
そこで、誰かと話すときは、意識して精神的な声を沈黙させるようにしましょう。相手の話に集中して、相手の話の内容だけを考えるようにするのです。
そうすることで、DMNがオフになり、CENが活性化し、より充実した交流が相手との間に生まれます。
つまり、精神的に強くなるだけではなく、人間関係も良くなるのです。
ちなみに、相手の話に積極的に耳を傾けることをアクティブリスニングと呼びます。これはマインドフルネステクニックの一種です。
好きなこと、難しいことをする
最後に、大がつくほどの好きなことをしてフロー状態に入る時間をつくりましょう。
フロー状態とは、ある活動に没頭して他のことが考えられなくなる状態のことです。この状態では、DMNは不活性化し、CENは活性化します。
ひとつの物事に集中することで、他のすべてことはどうでもよくなるのです。
フロー状態をつくるために、時間と空間を忘れてしまうような、好きな活動をする時間を持つといいです。
また、技術と集中力が必要な、少し難しいと感じる作業をすることでもフロー状態はつくれます。
新しい趣味をつくったり、昔から好きだったことの技術力を高めるように行動してみてください。
参考論文
Brewer, J.A., Worhunsky, P.D., Gray, J.R., Tang, Y., Weber, J., & Kober, H. (2011). Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. PNAS, 108(50), 20254-20259.
https://doi.org/10.1073/pnas.1112029108
Ulrich, M., Keller, J., Hoenig, K., Waller, C., & Gron, G. (2013). Neural correlates of experimentally induced flow experiences. NeuroImage, 86(2014), 194-202.