失敗してもひどく落ち込む必要はない
「成功と失敗、どちらの方がより豊富な知識と経験が身につくのか?」という疑問の答えは、実はすでに科学的に判明されています。
学びの過程としてより重要で、なおかつ私たちの脳みそに鮮明に刻まれるのは失敗の記憶と事例です。人は、成功からよりも失敗から多くの知恵を得ることができるのです。
ですから何かに失敗したり計画が破綻してしまったとしても、ひどく落ち込む必要はないのです。
失敗から得られる学びは成功よりも多い
失敗をすると、たしかに成功によって得られたはずの報酬は手に入りませんが、だからと言って何も手に入らないわけではありません。
失敗することにより、私たちは成功したときよりも多くの知識と経験を得ることができるのです。
そして、そこで得られた知識と経験は、一つの機会から得られる上で最も量の多いものなのです。
ビジネス書や経営書の成功談には注意
成功よりも失敗からの方が多く学べるという事実は、けっこう意外な結果だと思う人もいるかもしれません。
なぜなら私たちは普段、何かを学ぶときには成功事例や成功者の美談から物事を学ぶ機会が圧倒的に多いからです。正解の道だけを学んで、そのレール通りに進んでいくという感じですね。
例えば、多くの成功を謳うビジネス書や経営について書かれた書物はこれに当たります。
成功者は事業をいかに成功に導いてきたかを主張しがちですが、実際にはそれは偶然が引き起こした結果かもしれません。
特に経営者やビジネスマンが自伝的に書いている場合、きちんとした検証はされておらず、書き手のバイアス(思い込み)に左右されて物事が思い出されてストーリーも多少着色されています。
成功というのは検証するのが難しいのです。出版業界的には、最終的には成功した話でないと売れないので(絶対に失敗する方法を学びたがる人たちは少数でしょう)、売り上げを狙う以上は仕方のない構造なのですが。
嫌なことの方が記憶に残りやすい
その一方で、失敗はよりわかりやすく、誰の目にも明らかに映ります。ある人やある事業にとっての失敗は、他の人や事業にとっての失敗ともほとんど同じ意味を持っているのです。
また、失敗を記憶するのに役立つ機能として、私たちの心は損失回避という心理原則を持っています。
これは得たものよりも失ったものに対してより大きな影響を受け、その出来事を鮮明に記憶するという心理システムです。
良い思い出よりも苦い思い出の方がより深く心に刺さってしまうのはこのためですし、トラウマのように苦々しい記憶が長く留まり続けるのもこのためです。
ですが、このシステムがあるおかげで、私たちは安易に同じ失敗を繰り返さないように思考し行動できるのです。
失敗事例からの学びは、この損失回避の原則を最大限に利用できる心理的な記憶テクニックであり、だからこそ強力な記憶術となるのです。
失敗から学ぶと成績が上がる
シドニー大学のジャング博士は、私たちは失敗事例からの方が多くの事柄を学べるということを研究によって突き止めています。
この研究では13~15年の経験を積んだ59名の消防士を対象に、1,成功事例から学ぶ訓練、2,失敗事例から学ぶ訓練、というものを試しました。成功事例と失敗事例、どちらを学んだグループの方がその知識を訓練に活かすことができるのかを直接調べてみたのです。
すると、その訓練後に行われた8点満点のテストでは、失敗事例から学んだ人たちの方がずっと成績が高かったのです。
失敗教育は1.5倍の成績アップ効果
実験の結果を見ると、具体的には、成功事例から学んだ消防士たちのポイントの平均が5.08だったのに対し、失敗から学んだ消防士たちの成績は7.22とかなり満点に近い数値を出すことができました。
倍率で言うと約1.5倍ですが、8点満点で平均点が7点を超えるというのはかなり優秀な結果を残せたのではないかと思います。
対象となっている成功事例から学んだグループでは2ポイント以上成績が下回っていますからね。
失敗を失敗のままで終わらせない
というわけで、何かに失敗したとしてもそれで何もかもが終わってしまったのだとは考えずに、次の行動や成長のための必要な知識の蓄積だと考えましょう。
そうすれば失敗はただの失敗から、最良の教科書として機能してくれるようになります。ぜひお試しあれ。
失敗したときのことは記憶に残りやすい
人は成功よりも失敗からの方が多くを学べる
失敗を学びの場として捉えることでネガティブ思考から抜け出せる