【虐待と心理】なぜ子どもの前で夫婦喧嘩をすると児童虐待になるのか?

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発生件数がもっとも多い虐待とは?

 

児童虐待には身体的なもの、性的なもの、ネグレクトなどいくつかの種類があります。

 

その児童虐待の内容でもっとも多いのが「両親の喧嘩を目の前で見せさせられる」というものです。

 

詳しくない人からすると、「その程度で虐待になるの?」と驚くかもしれません。

 

夫婦喧嘩は心理的虐待と呼ばれる児童虐待の一種とされており、実際に虐待事件の中の7割から8割ほどの割合を占めています。

 

最近の研究によると、直接的な虐待行為やネグレクトを除けば、子供が心理的な問題を抱える一番の原因は、両親が子供の目の前で衝突することだと言われています。

 

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夫婦喧嘩が多い家庭ほど子どもの情動スキルが下がる

 

2018年に行われたバーモント大学心理科学部のアリス・シェルマーホーン助教授による研究では、夫婦喧嘩に巻き込まれることで、子供たちの情動的苦痛はどれだけ増え、彼らの認知機能にどのような影響があらわれるのかが調べられました。

 

この研究では、9歳から11歳の子供99人(男子56人女子43人)とその親御さんを対象に、家庭環境と子供の性格について調べられました。

 

ここでは、両親がどれくらい喧嘩しているかや、子供はどれくらい内気かといった質問がされました。

 

その後で、子供達には写真に写っている人物の感情を分類してもらうという実験を行いました。

 

すると、両親の喧嘩について心配している子供ほど、人の感情が読みにくくなっていたのです。

 

夫婦喧嘩が多い家庭で育った子供たちは自閉症スペクトラム障害のような症状に悩まされやすくなってしまうのです。

 

両親に不仲を見せられた子供は性格が内気になる

 

また、両親の不仲について心配している子供ほど内気な性格になる傾向がありました。夫婦の不仲は、子供の性格まで変えてしまうのですね。

 

たしかに一般的には、家庭が明るい環境だと子供も明るいという印象ですよね。

 

さらに、高い心配レベルと内気の性格が合わさった場合には、感情読み取る精度はさらに落ちてしまいました。この2つの要素には相互作用があるのです。

 

一方で、上記のような悩みがない子供ほど、内気のレベルと恐怖に対するレベルが下がり、人の感情も正確に読み取ることができました。

 

夫婦が仲良しだと、子供のコミュニケーションスキルは逆に上がるようです。

 

 

夫婦の話し合いは子供のいないところで

 

というわけで、直接的な虐待ではないにせよ、心理的な虐待は子供のメンタルに大きなダメージを負わせ、対人コミュニケーションに必要な能力を下げてしまうことがわかりました。

 

夫婦は常に仲良くというわけには現実にはなかなかいきませんが、少なくとも、家庭内の揉め事を解決したり、将来の進路など重要な議論をする時には子供がいない場所で二人っきりで行うのが好ましいでしょう。

 

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参考論文

 

Schermerhorn, Alice C. “Associations of Child Emotion Recognition with Interparental Conflict and Shy Child Temperament Traits.” Journal of Social and Personal Relationships 36, no. 4 (April 2019): 1343–66. 

https://doi.org/10.1177/0265407518762606.

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