【なぜ?】成功者からのアドバイスが役に立たない心理的理由を解説

やる気・モチベーションの心理学
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成功者のアドバイスは過信されている

 

以前に紹介したある心理現象で、「人は成功者からのアドバイスを過信しすぎてしまう」というものを話しました。

 

簡単に説明すると、私たちはある分野についての改善や目標達成を望む場合、その分野の成功者やすでに実績のある人たちからのアドバイスを求める心理があります。

 

この心理には多くの人が妥当な心理だと納得するでしょう。

 

しかし、実際には成功者からのアドバイスは他の人たちからのアドバイスに比べてより役立つわけではないのです。

 

というわけで、今回はその心理について、なぜそのような現象が起こるのか?原因は何なのか?について解説していきます。

 

研究では、なぜ優秀なパフォーマーからのアドバイスがより良く見えるようになるのか?という疑問を紐解くために、さらに研究を行いました。

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良いアドバイスだと感じてしまう理由

 

ハーバード大学ビジネススクールのデヴィッド・レヴァリ、ハーバード大学心理学部のダニエル・T・ギルバート、バージニア大学心理学部のティモシー・D・ウィルソ博士らは、次の実験で、研究の目的を知らない研究助手を対象に、権威性、行動性、明確性、わかりやすさ、提案の数、「すべき」提案(~するといいよ!)、「すべきでない」提案(~はやめといたほうがいいよ!)の7つの性質をもとに、集められたすべてのアドバイスを分析しました。

 

さらに、各特性は、そのアドバイスが役に立つと感じるか、そのアドバイスを受けると技術が改善されると感じるか、という観点で評価されました。

 

すると、アドバイスの有用性と改善度の両方を予測したのは、たった1つの特性だけだったのです。その特性とは、「アドバイスの提案数」です。

 

つまり、アドバイスの数が多ければ多いほど、その人からのアドバイスはとても有用なもののように感じられる心理が働くようになるということです。

 

アドバイスの量は質を上げない

 

どうやら私たちは量と質を取り違えて考えてしまうようです。

 

この研究は、少なくともある場合(特にアドバイスの数が多い場合)においては、私たちはトップパフォーマーからのアドバイスを過大評価してしまう可能性があることを示唆しています。

 

しかし、提案の数とアドバイスの効果との間には相関関係は見られませんでした。

 

つまり、トップパフォーマーは、人々により役に立つアドバイスを与えるわけではなく、より多くのアドバイスを提供するのです。

 

この結果からすると、成果を出した人ほどより多くのアドバイスを人に提供する心理も働くようになるのかもしれません。

 

「質を高めたければ量を増やせ!」というのはよく聞く成功法則ですが、ことアドバイスに関してはこの法則は守られないようですね。

 

成功者のアドバイスが役に立たない理由

 

では、なぜアドバイスが役に立たなかったのでしょうか。これにはいくつかの理由が考えられています。

 

まず、成功者たちが技術を習得するための基本的なアドバイスを見落としてしまう!ということです。

 

トップパフォーマーが特定の技術を習得するための基本的なアドバイスを見落としてしまうのは、「生まれつきの才能と豊富な練習量によって、意識的な思考が不要になっているから」だと推測されます。

 

例えば、子供の頃から毎日野球をしてきた天性のプロ野球選手は、力のバランスやバットの握り方など、直感的にわかることをわざわざ新人選手に教えようとは思わない可能性があります。

 

これは当たり前だから教えないということもありますが、その習慣がすでに彼らの中で無意識的に行われているために意識して教えることができない状態になっているからでもあります。

 

車の運転や歩き方など、ある技術が熟練すればするほど、私たちはそれらを無意識に扱うようになりますが、この無意識化のためにたとえ必要なことでさえもトップパフォーマーは他人に伝えることができなくなってしまうのです。

 

うーん、なんともに皮肉な話ですね。

 

優れた選手=優れたコーチではない

 

次に、いくらトップパフォーマーだからと言って、彼らのすべてがコミュニケーション能力に長けているとは限らないという点です。

 

優れたパフォーマーは、共有すべき明確な情報を持っていても、それを共有することが特に上手ではないかもしれない可能性があります。

 

たしかに、良い選手が良いコーチになるわけではないことはスポーツの世界ではすでによく知られていることかもしれません。

 

またその逆もしかりで、良いコーチが良い選手よりも優れた成績を残しているわけでもありません。

 

何かで結果を出すことと、その結果の出し方を人に伝授するのはまったく別のカテゴリーだと考えていいでしょう。

 

人からのアドバイスを活用する方法

 

今回の実験結果を踏まえて考えると、成功者から送られる大量のアドバイスは、現実的に私たちが実行可能な範囲を超える可能性があります。

 

私たちは、同僚やコーチ、先生や家庭教師、友人や家族など、良いアドバイスを求めて多くの時間とお金を費やしています。

 

しかし、本当に重要なのは、もらえるアドバイスの量について考えることではなく、与えられたアドバイスの中で実際に自分に使えるものがどれだけあるのかについて考えて取捨選択することなのです。

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参考論文

 

Levari, David E., et al. “Tips From the Top: Do the Best Performers Really Give the Best Advice?” Psychological Science, vol. 33, no. 5, May 2022, pp. 685–698, doi:10.1177/09567976211054089.

https://doi.org/10.1177/09567976211054089

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