加算バイアスとは?
加算バイアス(Additive bias)は、引き算をするほうが適切な場合でも、足し算を使って問題を解決しようとする心理的傾向のことを指します。
たとえば、より良いデザインを考案しようとしたときに、人は、既存のオブジェクトや色を取り除くのではなく、新しいものをそこに足して、「より良いものはないか?」と考えてしまいます。
これは仕事や勉強をするときにも起きがちなバイアスでして、たとえば、「お店の売り上げが上がらないから、商品の種類を増やそう!」と考えたり、「学校の成績が上がらないから、もっと広い範囲を勉強しよう!」と考えてしまうようなことが実際に起きます。
ほかにも、良いアイデアを出すためにブレインストーミングしがちだったり、マネージャーが部下の行動をより良い方向へコントロールするために指示を出しすぎたり、といったことも起きます。
加算バイアスに打ち勝った実例
このバイアスに打ち勝ったのがジョブズ時代のappleで、彼は多すぎる余計な商品を取り除くことでappleの経営を回復させました。
また、一部のヨーロッパの都市では、都市計画担当者が、道路をより安全にするために信号機や道路標識を廃止することを決定しました。
これは、従来の交通設計に反する考えですが、実際にうまく機能しました。
加算バイアス(Additive bias)は、引き算より足し算を使って問題解決しようとする心理的傾向。
たとえば、より良いデザインを考案しようとしたときに、人は、既存のオブジェクトや色を取り除くのではなく、新しいものをそこに足して、「より良いものはないか?」と考えてしまいます。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生@進化学と恋愛心理 (@kruchoro) 2021年11月15日
バイアスに勝てる人は20%以下?
しかし、2021年に行われたバージニア大学フランクバッテンリーダーシップアンドパブリックポリシースクールのガブリエル・S・アダムス博士の研究によると、このように減算を使用して問題解決できる人は少なく、実験ではわずか11~20パーセントの人だけしかいませんでした。
ただし、研究では、「引き算してもいいです」というふうに少しだけヒントを載せた指示をすると、引き算で考える人の割合が増えたこともわかりました。
どうやら思い出せさえすれば、私たちは引き算という戦略をきちんと使えるようになるようです。
良いものをつくろうとして機能を足しがちというのはよく起こる問題ですので、アイデアを練ったり問題解決をする際には、ぜひ引き算の考え方も意識して検討してみてください。
参考論文
Adams GS, Converse BA, Hales AH, Klotz LE. People systematically overlook subtractive changes. Nature. 2021 Apr;592(7853):258-261. doi: 10.1038/s41586-021-03380-y. Epub 2021 Apr 7. PMID: 33828317.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03380-y
Meyvis T, Yoon H. Adding is favoured over subtracting in problem solving. Nature. 2021 Apr;592(7853):189-190. doi: 10.1038/d41586-021-00592-0. PMID: 33828311.