古い組織を変えて新たな成功に導くための誘導の心理学
今回の知識は組織を束ねるリーダーならぜひ身につけておいてほしい心理学のデータです。
また、所属する組織や集団に不平不満があり、良い方へ変革させたいイノベーターの人は今回紹介する心理的なポイントを踏まえて組織変革に望んでほしいと思います。
組織を変えることは多大な努力と苦労がありますので、正しいやり方と方向性を先に学んで効率的にイノベーションを進めていってください。
組織を変えるためには人の心を動かす必要がある
今回は組織心理学の話ですが、例えばもっと大きく組織を捉えて、業界を変えるための心理テクニックとしても使えます。
つまり、今回の心理学は人の心を動かすための政治力を身につけるための心理学でもあるのです。
過去に、自分は正しいことを言っているのに人間関係の問題や衝突で失敗してしまい、重要な意見が通らなかったという苦い経験がある人は、ぜひこのテクニックを身につけて組織改革にリベンジしてみてください。
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組織を変えるために見るべき3つのポイント
イギリスのシェフィールド大学に勤めるマイケル ウエスト教授は、イギリスにある27の病院を対象に組織変革に関する科学的な調査を行いました。
調査の対象となった組織変革の基準は三つです。強度、新規性、有効性という項目です。
それぞれの項目は、組織がどれだけ大きく変化し(強度)、どれだけ新しい取り組みを行うようになり(新規性)、 ある行動の結果が変化に対してどれだけの効果があったか(有効性)を検証したものです。
組織に良い変革をもたらすための変化の見極め方
- 組織がどれだけ大きく変化したか(強度)
- どれだけ新しい取り組みを行うようになったか(新規性)
- ある行動の結果が変化に対してどれだけの効果があったか(有効性)
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良い変化を見極めなければいけない理由
つまりこの研究では、ただ組織が変化するだけでは意味がなく、組織変革において大切なのは、環境に合わせて以前と状況が大きく変わること、時代に合わせて新しい分野に挑戦していること、変化のために行っている努力に変化を起こす効果があること、だと仮定したわけです。
例えば、会社に変化を起こすことができても、会社のトイレの仕組みが和式なら洋式に変わったという程度の変化ではあまり意味がないですよね、ということです。
目的や目標に合わせて最適な変化を起こさなければいけないのですが、その効果を調べるために用いられたのが強度、新規性、有効性という項目なのです。
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組織変革を達成するための5つのポイント
次にこれらの基準に沿って実際の組織変革がうまくいったかどうかを数値化して調べたところ、以下の要素が組織変革を促進させることにとって重要であることが判明しました。
博士が指摘する組織変革のためのポイントは5つあります。横の数字は組織変革への影響の度合いを示した数値です。
- 上司(管理職)のサポート0.68
- スタッフの参加度0.64
- 変化の方向性0.57
- 目標の明確さ0.53
- イノベーターの比率0.28
良い変化を生み出すためには先述した3つの基準が必要ですが、その変化自体をもたらすためにはこれら5つの努力が必要なのです。それではこれらのポイントを順番に解説していきます。
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上司(管理職)のサポート0.68
組織を変革するためには、やはり権力を持っている人からの協力や積極的なサポートが欠かせないようです。
現場で良いアイディアが出ても、それを実行するためには権限を持っている上司を納得させ、協力してもらわなければいけないのです。許可を出せるのは上司だけですからね。
また上司の評価や叱責を恐れて組織変革に協力できない人もいます。彼らの心理的な負担を軽くして自由に行動してもらうためには上司の許可と肯定的な態度が必要になるのです。
組織図の中で下の方に位置する従業員からのボトムアップ的な改革だけでは組織は変わらないのです。切ない話ですが。
なので「状況を変えるぞ」という現場の精神や情熱だけではなく、合理的な説得話法を用いて上司を説得し、上から影響を及ぼしていくという流れを作るこが大切です。上からの命令や許可があれば多くの人が動いてくれるようになります。そして、まずはこの難問を解決することから組織変革は始まります。
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スタッフの参加度0.64
しかし、先程とは逆に、上司や幹部が上から命令するだけでも組織の変革は不可能であることがわかっています。上司の指示に合わせて、現場のスタッフが積極的に参加することが必要不可欠なのです。
つまり、組織内の立場で上と下に位置する人々の連携がないと組織変革は起こせないのです。
ドラマ踊る大捜査線における室井さんと青島さんのような人間関係が必要なのですね。
組織内で大きなことを行おうと思ったら人家関係、それも上下の人間関係が重要になってくるのです。
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変化の方向性0.57
組織変革と言っても、組織が新しくどのように変わるのかという方向性やビジョンがなければうまくいきません。
つまり、目標となる明確なゴールの設定ですね。どこに向かえばいいのかわからないと努力のしょうがないわけですし、口先だけの言葉になってしまいます。
目標の設定と明確化は、心理学の研究ではよく挙げられているアドバイスの一つです。
設定したゴールに向かってどのように進めばいいのか、その道筋も合わせて提示する必要もあります。道筋を示すことで組織変革が達成可能な事柄であると理解できるようにもなります。
さらには、新たな変革の目指すところが、現在の組織を構成している人々から強く望まれていることが重要であるということもわかっています。
そもそも周りの人たちがその変化を望んでいなければサポートも得られないので変化は失敗に終わってしまうのです。
本当にその変革が組織に所属する人々のためになるのか、事前に同僚から要望や不満をヒアリングして組織の人々の意見をまとめる作業も必要なのです。
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目標の明確さ0.53
組織が一丸となって変革を進めるためには、目標が抽象的であってはうまくいきません。具体的で明確な行動指針が必要なのです。
一人で行動するのであれば多少の曖昧さは感覚で解決できますが(それが良いかどうかは別として)、集団で行動をする場合は所属するメンバーが迷わないための明確な目標が必要になってきます。
例えば目標達成の途中で問題が起きたときに、ある人の場合はAという解決策で解決し、ある人の場合はBという解決策で解決していては混乱が生じてしまいます。
こうした組織内の人々の認識のズレは放っておくと、人間関係の対立を生み出してしまうことにも繋がるので注意が必要です。そしてこのような派閥が複数できてしまうと変革は起こせなくなってしまいます。社員の心がバラバラだと組織は変わらないのです。
だからこそ、混乱を招かないように、目標は常に具体的なものである必要があります。
評価や判断材料のためのデータの数値化、同時に問題が起きたときの優先事項の決定などマニュアル化されたルールがあれば、制限は付きますが、それだけ混乱が生じることもなくなります。
具体的な目標とその目標を達成するための具体的な手段を明示してあげましょう。
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イノベーターの比率0.28
組織の中にいる積極的な変革の実行者の数が多ければ多いほど、組織変革のための行動は効果的になるということがわかっています。
自ら率先して変化を成し遂げようとする協力者がいれば、それだけ組織の変革はスムーズに進むのです。これはわかりやすい理由だと思います。
なので、これから組織の変革を行いたいと思っている人は組織内にいるイノベーターの発掘と彼らの意思をまとめる政治力が必要になります。
イノベーターというのはたいてい自分のアイディアを試すことが好きで行動力もありますから見つけるのは簡単です。わかりやすいのが生意気な性格の人や不満を持っている人です。
イノベーター志向の人たちは効率や目標に対して従順であり、結果に繋がる努力が好きです。なので、非効率な慣習や古いシステムに反発しがちで、それゆえに昔のやり方に慣れた人たちや人付き合いを重視する人たちと対立する傾向があります。
こういった兆候がある人たちを見分けて、彼らの要望や不満を聞き込み、彼らの望みを叶えてあげる形で協力的なイノベーターを集めるのです。
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組織変革は一人では決してできない
というわけで、組織を変革するための5つのポイントでした。組織を変えたり、新しいことに挑戦したい人は今回のポイントを踏まえてまずは組織変革のための環境づくりから始めてみてください。
何事も綿密な計画と準備が成功の要になってきます。そして起こす変化が大きければ大きいほど計画と準備の重要度は上がってきます。これは個人でも組織でも同じです。
組織変革は一人ではできません。そこではあなたの政治力がものを言います。なので、コミュニケーションスキルをフルに利用して協力的な人たちが集まる環境を整えていきましょう。変化の前には下準備が必要なのです。
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