くるちょろ心理学研究所

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【認知行動療法】行動を変えることで感情をコントロールする行動活性化を解説

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行動活性化 (Behavioral activation, BA)とは?

 

前回の認知行動療法の記事では、感情・考え・行動・身体反応はすべて相互作用していると解説しました。感情は行動に影響を与えると同時に、行動もまた感情に影響を与えているのです。

 

つまり、感情をネガティブなものからポジティブなものに変えたいと思ったら、行動を変えることで感情に影響を及ぼすことができるということです。

 

このように「行動を変えることで感情を変えようとする試み」のことを行動活性化(療法)と呼びます。今回は、この行動活性化について詳しく解説していきます。

 

行動活性化が問題解決に役立つ理由

 

前回も解説した通り、ネガティブな気分や感情が改善するのを待っていても、それがいつになるかは誰にも分かりません。

 

いつまでもネガティブな気持ちでいたら、行動もネガティブなものになっていってしまうでしょう。だから私たちはなるべくネガティブな気持ちを早く解決しようとします。

 

しかし一方で、行動を変えれば、感情や気分もそれに影響されて変化することがわかっています。

 

なので感情ではなく、行動を先に変える(何か行動する)ことでネガティブな気持ちを改善することができるのです。

 

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行動活性化はネガティブな気持ちを改善する効果が高い

 

研究によると、行動活性化は、特に抑うつ的な気分や不安などの感情の解消に効果が高いことがわかっています。

 

つまり、行動活性化を行えば、ネガティブな感情が変わるのをただ待っていなくても済むようになるのです。

 

また、私たちは自力で感情は変えられなくても、行動ならより簡単に変えることができます。この点でも行動活性化は心の悩みやメンタルの不調に役立ちます。

 

行動活性化のやり方

 

行動活性化療法は、第三世代の認知行動療法の1つにも分類される心理療法です。行動活性化では、様々な行動を試してみて、感情が変わるかどうかを実験していきます。

 

具体的な方法は、次の手順に従って行われます。

 

  1. 活動の候補をたくさん挙げる
  2. 活動のリストを作り評価する
  3. 行動実験をしてみる
  4. 行動実験をふりかえる

 

順番に解説していきます。

 

活動の候補をたくさん挙げる

 

まず最初に、小さな喜びや達成感が得られそうな活動を暮らしの中の身近なところから探していきます。

 

この段階では活動の内容や質にこだわらず、思いつく限りたくさんの活動を挙げてみましょう。活動の評価は後で行うので、今はやらずに活動の候補をできるだけ多く挙げるだけで大丈夫です。

 

とはいえ、簡単には思いつけない場合もあるので、活動の候補を挙げるコツもいくつか紹介していきます。

 

昔やっていた好きなことを思い出す

 

活動の探し方としましては、まず「今までにやったことのある活動」や「これまでやったことのある活動の中で最近はやらなくなってしまったこと」などを思い浮かべると見つけやすいです。

 

例えば、次のような活動があります。

 

  • 昔やったことのあるスポーツをしてみる
  • 昔読んだ本やマンガをまた読んでみる
  • 昔行ったことのある場所に行ってみる
  • 最近食べていない食べ物をまた食べてみる
  • 最近着ていない服を着てみる
  • しばらく会っていない友人に連絡してみる

 

一見するとただの娯楽にしか見えないことでもリストに挙げていきます。

 

やってみたかった活動を思い出す

 

また、今までにやったことがない活動でも、やってみたいことがないか探してみましょう。

 

ここでは、前から興味があったけれど、時間がなくて保留にしていたものなどもリストアップしていきます。

 

例えば、次のようなものがあります。

 

  • やってみたかったスポーツをやる
  • 行ったことのない場所に行ってみる
  • 話しかけたことのない人にあいさつする
  • わざと笑顔を作ってみる
  • 誰かに感謝の気持ちを伝えてみる
  • 誰かにプレゼントしてみる
  • 普段着ない色の服を着てみる
  • 雑誌やテレビで楽しそうなことを情報収集してみる

 

「お金や時間が無限にあったら何をするだろう?」と想像してみると、思いつきやすいです。

 

喜びや達成感が得られる活動リストの例

 

次は、ポジティブな感情を得られそうな活動から候補を探していきます。

 

行動活性化では、喜びや達成感を得ることが大切なので、喜びや達成感を感じられそうな活動をリストアップしていきます。

 

小さな喜びや達成感が得られる活動の例として、次のようなものがあります。

 

小さな喜びが得られる活動

 

  • 指相撲、しりとりをしてみる
  • 晴れた日に空を眺めてみる
  • 夜風にあたってみる
  • 散歩してみる
  • 誰かに挨拶してみる
  • 周りの人に話しかけてみる
  • 周りの人とゲームをしてみる
  • 美人・イケメンウォッチング
  • お菓子を買って食べてみる
  • ショッピングに行ってみる
  • 知人にメール・電話をしてみる

 

小さな達成感が感じられる活動

 

  • 簡単な用事を片づける
  • 筋トレしてみる
  • ラジオ体操に参加する
  • 俳句を作ってみる
  • 誰かに手紙を書いてみる
  • パズルを解いてみる

 

上記の例を見ての通り、家事や趣味を含めて些細なことで十分ですので、喜びや達成感を得られそうだと思ったら手当たり次第にリストアップしていってください。

 

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五感を活用する活動を探す

 

五感に当てはめて良い活動がないかを探すのも良い手です。

 

五感を使った活動には、例えば次のようなものがあります。

 

  • 触覚:好きなぬいぐるみを触る、粘土遊び、陶芸
  • 味覚:コンビニの新作のスイーツを食べる、激辛料理に挑戦する
  • 嗅覚:自然の中で深呼吸する、香水をつける、アロマを嗅ぐ、好きな香りを部屋に置く、花の香りを嗅ぐ
  • 聴覚:音楽を聞いてみる、自然の音に耳を傾ける
  • 視覚:写真集・雑誌を見てみる、空をみる、花をみる

 

マインドフルネスのような活動をイメージしてみるとわかりやすいですね。

 

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逆に活動をやめてみる

 

また、習慣になっている活動をやめてみるのもおすすめです。

 

習慣化していたことを止めてみることで、新しいことを始めるゆとりができたり、気持ちが切り替わって元気が出てくるかもしれません。

 

次のような「やめる活動リスト」も作ってみましょう。

 

  • いつも一緒にいる人と会わないようにしてみる
  • いつも頼まれる雑用を断ってみる
  • いつも自分がやっていたことを人に頼んでみる
  • 使ってないものを処分して、部屋をすっきりさせる
  • 電話・メール・テレビなどに1日触れないようにしてみる
  • カフェイン・アルコールを1週間だけ控えてみる

 

活動のリストを作り評価する

 

活動のリストが出来上がったら、その中から良さそうな活動を5つリストアップし、それぞれの評価をしていきます。

 

活動の評価は次の3つのポイントで見ていきます。

 

  1. 喜び:どれくらい喜びを得られそうか? 
  2. 達成感:どれくらい達成感がありそうか?
  3. 難易度(達成確率):難しさはどれくらいか?

 

これらの質問を0-100点満点で評価していってください。この評価をもとに実践する活動を選んでいきます。

 

例えば、「散歩 喜び:30 達成感:20 難易度:10」といった感じです。

 

行動実験をしてみる

 

リストアップしたら、5つの中からこの1週間でできそうな活動を1つ選んで実行に移します。

 

最初は、身近なもので簡単にできそうなことを選ぶのがうまくいくコツです。準備に手間がかかったり、時間をおかないとできないようなことは次の機会にします。

 

大きな行動は小さく分解してみる

 

また、大きくて難しそうな行動は小さく分けてみましょう。

 

例えば、「友達と旅行に行く」という活動なら、まずは「友達に連絡を取ってみる」ことから始めてみます。

 

行動実験をしていく際に、こうして内容を具体的に決めておくことで実行力が高まります。

 

「いつ?」「どこで?」「誰と?」「どのように?」「どれくらい?」といった質問を自分にして、細かな内容を決めていきましょう。

 

例えば、「あいさつをする」という行動実験でしたら、「日曜日に、職場で、今まであいさつしたことのなかった人のうち3人に、『こんにちは』と声をかける。」といった感じです。

 

達成率の高い行動だけを選ぶ

 

具体的な内容が決まったら、ふたたび予想される喜びと達成感と難易度(成功確率)を評価しましょう。分解してみたら意外と大変だと気づくこともあるかもしれませんからね。

 

このとき行動の達成確率が80%以下となるのなら、難易度が高すぎるかもしれませんのでもっと簡単な活動に切り替えていきます。

 

行動実験をふりかえる

 

最後に、予定していた活動を実行に移すことができたら、「その行動によって感情や気分がどれくらい変わったのか」を行動実験ノート、もしくはメモに記録していきます。

 

また、「喜び」「達成感」「難易度」を行動実行後に再び評価し、予想された評価と実際にやってみた感じとでどれくらい違ったか、あるいは正確だったかを調べるのもおすすめです。

 

やってみたら意外と簡単だったり、意外と喜びをたくさん感じられた!という活動があれば今後の役に立ちます。

 

このとき感情と行動を実験する科学者になったイメージでチャレンジしていくと気分が乗ってきて良いでしょう。

 

期待通りの結果が出なくても良い

 

行動実験はその名の通り「実験」です。実験には期待外れの結果が生じることがつきものです。

 

しかし、だからと言ってそれで「食わず嫌い」にならず、思いきって身体を動かしていきましょう。とりあえず試してみることが重要なのです。

 

また、うまくいかなかったら、どこがうまくいかなかったかを振り返り、次の計画を立てていけば大丈夫です。

 

というわけで、生活の中で楽しい活動の数を増やし、楽しくない活動や活動しない時間を減らすことができるよう、行動活性化の計画を練っていってください。

 

次回は、「呼吸法(とリラックス法)」について解説をしていきます。

 

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参考論文、資料

 

第2回 行動を活性化しよう(行動活性化)

http://npsy.umin.jp/~npsy/cgi-bin/wordpress/wp-content/themes/tokyo_univ/pdf/nyumon2.pdf

Hopko, D. R., Robertson, S. M. C., & Lejuez, C. W. (2006). Behavioral activation for anxiety disorders. The Behavior Analyst Today, 7(2), 212-232. 

http://dx.doi.org/10.1037/h0100084

Ekers D, Webster L, Van Straten A, Cuijpers P, Richards D, Gilbody S. Behavioural activation for depression; an update of meta-analysis of effectiveness and sub group analysis. PLoS One. 2014 Jun 17;9(6):e100100. doi: 10.1371/journal.pone.0100100. PMID: 24936656; PMCID: PMC4061095.

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0100100