ソシオメーター理論とは?
自尊心を左右する重要な要因のひとつは、他者から肯定的に評価されていることです。
これまで自分で自尊心を高める方法について解説してきましたが、結局のところ他人から良い評価を得られないと私たちの自尊心は高めることができないというのが「ソシオメーター理論(Sociometer theory)」です。
ソシオメーター理論では、一般的な認識と反して、「自尊心は自分が自分自身についてどのように感じているか?によって生じるものではない」とされます。
自尊心は自分でどうにかできるようなものではなく、自分が周囲の人たちに受け入れられているかどうかを示すただのシグナルとして存在しているのです。
つまり、単純に自分が自分を好きだと思っているかどうかということは、自尊心の高低には関係がないのですね。
むしろ、その状態は周りに受け入れられている結果にすぎないのです。興味深い話ですね。
自尊心はなぜ存在するのか?自尊心の役割について
私たちは他者が自分に対してどのような評価をしているのか、無意識のレベルで常に観察をしています。
そして、他者から受け入れられていないという状況を認識すると、自尊心の低下というかたちで、危険信号を発すると考えられています。
これが「ソシオメーター理論」です。社会的な評価をメーターのように表していることから、この名前がついているのですね。
自尊心は人間関係がうまくいっているかどうかの基準
自尊心は他者からの評価を表している心の信号です。
つまり、自尊心のレベルは自分がどれだけ社会に溶け込んでいるかを計るための基準なのです。
自尊心が低い人は、周りに馴染んでおらず、社会的な問題を抱えている可能性があるため、何か行動を起こす必要があります。
逆に、自尊心が高い人は、周りとうまく共存できており、人間関係も豊かな状態であるということです。
自尊心を高めるために必要なことは?
ソシオメーター理論から考えると、自尊心を高くするためには、周囲から受け入れられる必要があります。
周囲から受け入れられるためには、相手のためになる行動や何かの役に立つことをあなたがする必要があります。
自分について考える前に、周りの人たちについて考え、それに基づいて行動していくことが自尊心を高める方法なのです。
そして、もうひとつ、あなたの才能や能力を十分に発揮でき、適切に評価してくれる人たちのいる環境に身を置くことが大切です。
奉仕活動と環境整備、そしてコミュニケーション
高い自尊心を持つ人は他者を幸せにできるだけではなく、周りからも頼られ、好意的に評価されています。
つまり、自尊心を高め、自分の幸福感を高めるために必要なのは、他者とうまく付き合い、周りの環境を整えていくことなのです。
他者に認められることで初めて私たちは自分自身を認められるようになるのです。
まとめると、「自尊心が低い」→「自分のことが好きではない」→「原因は周りの人に評価されていないから」→「だから、人のためになる行動し、コミュニケーションスキルを学ぶ必要がある」ということです。
しかし、自尊心が低い人ほど人付き合いが苦手な傾向があるので、この問題を解決するためにもコミュニケーション方法のほかに、不安症対策やストレス対策などを学んでいく必要があります。
参考論文
Cameron J.J., Stinson D.A. (2017) Sociometer Theory. In: Zeigler-Hill V., Shackelford T. (eds) Encyclopedia of Personality and Individual Differences. Springer, Cham.
https://doi.org/10.1007/978-3-319-28099-8_1187-1
Mark R. Leary (2005) Sociometer theory and the pursuit of relational value: Getting to the root of self-esteem, European Review of Social Psychology, 16:1, 75-111, DOI: 10.1080/10463280540000007
https://doi.org/10.1080/10463280540000007
Leary, M. R., Tambor, E. S., Terdal, S. K., & Downs, D. L. (1995). Self-esteem as an interpersonal monitor: The sociometer hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 68(3), 518–530.
https://doi.org/10.1037/0022-3514.68.3.518
Baumeister, Roy F., Jennifer D. Campbell, Joachim I. Krueger, and Kathleen D. Vohs. “Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?” Psychological Science in the Public Interest 4, no. 1 (May 2003): 1–44.
https://doi.org/10.1111/1529-1006.01431.
Leary, M. R., Tambor, E. S., Terdal, S. K., & Downs, D. L. (1995). Self-esteem as an interpersonal monitor: The sociometer hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 68(3), 518–530.