幸せのコツは新しい経験
幸せになる方法はいくつかありますが、今回紹介する研究によると、特に新しい経験を積むことが幸福度をアップするのに役立つことがわかっています。
つまり、幸せになりたいのなら普段とは違う行動をしよう!ということですね。
新しい場所で長く過ごすほど幸せになる
2020年に行われたマイアミ大学心理学部のアーロン・S・ヘラー、C・E・チエメカ・エジ、トラヴィス・R・ルノー、ララ・M・バエズ、コナー・J・ギボンズ、ニューヨーク大学心理学部のトレーシー・C・シー、キャサリン・A・ハートリー博士らの研究では、ニューヨークとマイアミに住む人々の感情と行動を3~4ヶ月にわたって追跡調査しました。
その結果、同じ日のうちに目新しい場所や普段とは異なる場所に行った人たちは、幸せ、力強さ、リラックス、興奮を感じたと報告する傾向があることがわかりました。
さらに、自分にとって目新しい場所で過ごす時間が長いほど、よりポジティブな感情を抱くことがわかりました。新しい経験は多ければ多いほど良いのですね。
小さな変化で幸せになる
また、新しい経験を積むために大袈裟なことをする必要もないこともわかっています。
日常にちょっとした変化を加えるだけで、私たちの脳みそはそれを新しい経験としてカウントするのです。
例えば、散歩をしたり買い物に行くときに、いつも通る道とは別の道を歩くといった比較的小さな変化でも、ポジティブな感情を増やす有益な効果をもたらす可能性があります。
ポジティブな気持ちが経験的多様性を生む
研究者は、この新奇性にあふれた多様な経験を経験的多様性(Experiential diversity)と呼んでいます。
この研究結果は、日常生活の中でより多くの変化や多様性があることがポジティブな感情体験を生み出すことを示唆しています。
つまり、知らない土地、行ったことのない新しい場所に行き、より多くの変化に富んだ経験を積むことで、人はより幸福を感じることができるのです。
また、その逆もまた真なりで、ポジティブな感情を持つことは、人々がより頻繁にこうしたやりがいのある経験を求めるように駆り立てる影響力を持ちます。
つまり、経験的多様性がポジティブな気持ちを生み、ポジティブな気持ちが経験的多様性を生むという幸福スパイラルを起こすのです。
人は幸せを求めるよりも不幸を回避することを優先します。だから、面倒くさいや不安という感情が勝ってしまって、なかなか行動を起こせません。挑戦ができない、人とはそういうものです。でも新しいコンビニスイーツは試してみようと思いますよね。つまり、小さな幸せのためになら動けるのです。重要。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年11月8日
新奇性と幸福が結びつく理由
新しい経験が幸福と結びつく理由は、新奇性と報酬に関わる重要な部位である海馬と線条体との間に強い関連性があるからです。
なので、新奇性(新しいことを追求する気持ち)を刺激することで報酬系も刺激され、幸せな感情を感じることができるようになるのです。
また、ある人々の脳は、多様な経験に特に敏感で、それがより大きな後押しになります。
つまり、新しいことをすると他の人よりも幸せを多く感じられる人がいるのです。おそらく開放性の高い人たちがこれにあたるのでしょう。
このような人たちでは、良い気分になることと、報酬や新しさを処理に関わる脳の部位同士(海馬と線条体のシステム)に、より強いつながりがあります。
というわけで、ポジティブな気持ちを高めるためにも、マンネリ化した日常に一石を投じてみてください。
参考論文
Heller, A.S., Shi, T.C., Ezie, C.E.C. et al. Association between real-world experiential diversity and positive affect relates to hippocampal–striatal functional connectivity. Nat Neurosci 23, 800–804 (2020).