あなたが好きになるタイプ
さて今回の話ですが、「好きなタイプは好きなタイプではない」ということについて解説していきます。
何を言っているのかわからない状態ですが、これを言い直すと、「あなたが思っている好きなタイプは、実際の好きなタイプではない」ということです。まだわかりにくい気がしますね。
通常、私たちは恋バナなどをするときに、「どんな人が好き?」「どんな人がタイプ?」といった話を展開します。恋愛トークの定番ですね。
このような会話は何も男女の関係に限らず、同性同士でもよく交わされる内容でしょう。
しかし、研究によると、私たちは自覚した異性のタイプには惹かれないということがわかっているのです。
好きなタイプは間違っていた?
実はこれまでの心理学の研究では、私たちが恋愛の相手について好きだと思っていることと、実際に好きなことは、しばしば異なるという事実が発見されています。
トロント大学心理学部のアリネ・ダ・シルバ・フロスト、 Y・アンドレ・ワン、 ポール・W・イーストウィック、 アリソン・レジャーウッド博士らが2022年に行ったの新しい研究では、人がどのように好きなタイプを形成するのか、また、その考えが付き合う相手を選ぶ際に影響するのかどうかについて調べられました。
すると、人が好きだと思っていること(頭が良い人が好き、優しい人が好きなど)と、実際に相手を好きになる動機との間には弱い関係しかないことがわかったのです。
つまり、あなたの好きなタイプ(優しい男性)が目の前にいたとしても、その人を好きになる可能性は思っているよりもかなり低いのです。
重要なのは経験そのもの
では、いったい何が私たちに恋愛のモチベーションをもたらすのでしょうか?
その答えは社会的文脈と実際の経験でした。
研究者は、恋愛感情が発展するのは偶発的な出来事が関連していると言います。
例えば、あなたは誰とでも会話が楽しめる外向的な人がタイプだと思っているかもしれません。
しかし、その考えは、パーティーのような不特定多数の人との会話を楽しむ場面で、外向性に魅力を感じたからかもしれないのです。
つまり、「パーティーでいろんな人と会話ができる人と過ごすのは楽しいな。ということは、私はきっと外向的な人が好きなんだ」というふうに考えた結果、外向的な人が好きなタイプと思い込んでしまうのです。
その人ではなく文脈に恋をした
しかし、この場合では、実際にあなたは「外向性」という特定の性質を好きになったのではなく、「パーティーでは外向的な人と過ごしていると楽しい」という社会的な文脈に気づいたに過ぎないのです。
パーティーという特定の状況だからこそ、その人と過ごすのは楽しいのかもしれませんが、他の場面ではまったく楽しくないかもしれません。
この勘違いのために、「付き合ってみたけれどなんか思っていたのと違った」ということが起きてカップルは別れてしまうのですね。
つまり、「この人といるこの状況好き!」=「(どんなときも)この人といるのが好き!」というふうにはならないのです。
文脈から恋に落ちる
説明の難しい話ですが、これが社会的文脈で恋をするということです。このような心理現象が起こるのは、経験による心理的影響が大きいからです。
というのも、実際にその人と過ごすのが楽しかったことはまぎれもない事実なので、その経験と感情をもとに別の日にデートに誘うのは何も間違ったことに思えませんよね。
つまり、私たちはそのときの状況に恋愛的な決定を大きく左右されているのです。
理想(経験をする前)と現実(経験をした後)は違うのですね。
良い恋愛のためのアドバイス
この事実からひとつ恋愛アドバイスをするのなら、「好きなタイプに惑わされるな」ということです。
私たちは「○○な人が好き」という固定観念によって、潜在的な恋愛相手の幅を狭めてしまっています。
しかし、その考えは偶発的な出来事によってつくられた勘違いにすぎません。
恋愛で成功し、幸せになりたいのなら、「○○な人がいい!」「○○な人はいや!」といった考えに縛られずに心を広く持って異性と付き合うことが大切です。
恋愛も結局、実際に人と出会い、デートをして、経験を積むことでしか改善されていかないのですね。
参考論文
da Silva Frost A, Wang YA, Eastwick PW, Ledgerwood A. Summarized attribute preferences have unique antecedents and consequences. J Exp Psychol Gen. 2022 Aug 1. doi: 10.1037/xge0001242. Epub ahead of print. PMID: 35913872.