女性の方がおしゃべりは本当か?
「女性が参加すると会議は長引きますか?」という質問が来たので答えます。言いづらいのですが、女性が参加する会議が長引くことは””あり得ます””。
ただし、そうなるには条件がそろう必要があります。そして、「そのような条件はまだそろっていない」というのが今の社会の現状です。
つまり、「女性が参加する会議の方が長引く可能性はあるが、現状はそうなっていない」ということです。
ややこしい話ですね。ちゃんと順を追って解説していきます。
女性の方が時間をかけるのが好き
まず会話にかける時間の違いについては、男性と女性の心理の違いが関係しています。
一般的に男性はポジティブでリスキーな行動を取る傾向があります。比べて女性はネガティブでより安全を確保しようとします。そのために細かなポイントの追求や情報の確認をよくします。
男性はパッパと話を終わらせますが、女性はそれだと不安なので話し合いをします。なので、男性だけのメンバーで会議を開いた場合と、男女混合で会議を開いた場合は男女混合の方が長引く可能性があるということになります。
男女の心理について詳しくは以下の記事で解説しています。
女性の方がゆっくり話すのが好き
さらにメリーランド大学の研究によると、女性はゆっくりとしたコミュニケーションを好むこともわかっています。
つまり、女性の方が言葉数を多く話し、スピードもゆっくりと落として話すので、女性が参加している会議の方が時間がかかる可能性があるということになります。
男女の心理は思い込みがほとんど
しかし、こうしてよく指摘される男女の心理的な性差ですが、私たちが思っているよりも大きくはありません。
私たちは「男性には男性心理、女性には女性心理があり、それはまったく別々のものだ」と思い込んでしまうのですが、実際にはそれらの根本にあるのは共通の人間心理であり、男性も女性もほとんど同じ心理を持っています。
実際に研究では、女性の方が多く話すというデータはありますが、男性の話す量とさほど変わりません。
つまり、女性の参加で会議が長くなったとしても、ほとんど大差はないということです。
女性の方が発言しにくい社会構造
また、森元首相の女性軽視問題でよく指摘されるように、実は「社会的な立場から、公共の場では女性の方が話す量が少ない」のも事実です。
これは学校現場でもそうです。男性生徒の方が女性生徒よりも発言量が多いことがわかっています。
以上のことを踏まえると、社会的なプレッシャーを感じている場面では、女性はより発言量が少なくなり、むしろ会議の時間が短縮される可能性もあります。
女性の発言量が増えるのは、「発言しても大丈夫」という心理的な安心感が感じられている場面でのみなのです。
女性は男性よりも25%も発言量が少ない
実際に、2012年に行われたブリガムヤング大学のクリストファー・F・カルポウィッツ、タリ・メンデルバーグ、リー・シェーカー博士らの研究では、男性が多数を占める会議では、「女性一人当たりの発言時間は、男性一人当たりが話す時間の75%しかない」という結果も出ています。
にもかかわらず私たちが「女性は男性よりもずっとおしゃべり」だと思うのは、「女性はおしゃべりだ」というようなステレオタイプが社会にあるからです。
つまり、ただの思い込みです。心理的バイアスのひとつですね。
長い会議が悪いとも限らない
また、会議が長引くからと言っても、それが悪い結果につながるとは限りません。
無駄な確認の時間を除けば、会議参加者たちの会話量が増えることで、より慎重な協議でより質の高い答えが出る可能性が高まるからです。
最後に再度言っておきますが、これはあくまで可能性の話であり、「女性参加の会議のほうが所要時間が長い」という研究結果を報告するものではありませんので、悪しからず。
参考論文
Nancy S. Niemi (2010) Still failing at fairness: how gender bias cheats girls and boys in school and what we can do about it, by David Sadker, Myra Sadker and Karen Zittleman, Gender and Education, 22:1, 142-143, DOI: 10.1080/09540250903464773
https://doi.org/10.1080/09540250903464773
Brigham Young University. (2012, September 18). Women speak less when they’re outnumbered. ScienceDaily. Retrieved February 10, 2021