”恐怖”を克服する新たな視点:クモ恐怖症の治療法が高所恐怖症にも効果的?

心と体の健康心理学
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クモ恐怖症の治療が高所恐怖症の克服に役立つ可能性

クモ恐怖症治療の研究

2023年に行われたルール大学ボーフム校(ドイツ)の行動および臨床神経科学の学部のアイリス・コザガ、エクレム・デレ、アルミン・ズロムジカ博士らの研究によると、クモ恐怖症の治療が高所恐怖症の治療にも役立つ可能性があるという結果が出ています。

これは「限局性恐怖症」と呼ばれる、ある特定の何かに対して激しい不安を感じる状態についての研究です。

限局性恐怖症というと難しいですが、一般的な恐怖症がこれにあたります。たとえば、クモやヘビ、高い場所、閉じた空間などを極度に怖がる症状です。

今回の研究による発見は恐怖症の治療法に新たな視点をもたらす可能性があります。

高所恐怖症のレベルが15%減少

これは具体的には、18~40歳のクモ恐怖症と高所恐怖症を持つ被験者50人を対象にした実験で、クモ恐怖症に特化した暴露療法を受けたグループが高所恐怖症のレベルが平均して15%減少したという結果が出ています。

暴露療法で高所恐怖症の克服

この研究では、クモ恐怖症の治療に用いられる「暴露療法」が高所恐怖症の克服にも効果的であることが示唆されています。

暴露療法は、恐怖を引き起こす対象や状況に徐々に慣れていくことで恐怖反応を減少させる心理療法の一種です。誰でも一つは持っているでしょう。

参考までに、暴露療法の一般的な方法について簡単に解説しておきます。

暴露療法とは?

暴露療法は、恐怖や不安の原因となる刺激や状況に、段階的に自身をあえて晒すこと(暴露すること)で、不安反応を消していくことを目指す心理療法の一種です。

別の言い方をすると、暴露療法は怖いものに少しずつ慣れていく方法です。それはまるで、初めてプールに入るときに少しずつ水に慣れていくのと同じようなものです。以下に、その手順を簡単に説明します。

  1. 評価と目標設定: まず、あなたが何を怖がっているのか、それをどう克服したいのかを探ります。
  2. 不安階層の作成: 次に、あなたが怖がるもののリストを作ります。それは、ちょっと怖いものからとても怖いものまで色々なものが含まれます。
  3. リラクゼーションや不安管理技術の学習: あなたは、リラックスする方法や、怖さをコントロールする方法を学びます。
  4. 最初の暴露課題の選択: リストの中から、一番恐怖の少ないものを選びます。
  5. 暴露課題への曝露: その怖いものに少しずつ慣れるために、実際に向き合っていきます。
  6. 暴露中の不安の管理: その怖いものに向き合っている間、あなたは学んだリラックスする方法や怖さをコントロールする方法を使います。
  7. 反応の観察と記録: あなたがどう感じ、どう反応したかを記録します。
  8. 暴露の進行と階層の移行: あなたがその怖いものに慣れてきたら、次にもう少し怖いものに向き合っていきます。恐怖のレベルを上げていくのですね。

暴露療法は、不安症や恐怖症の治療に効果的であるとされていますが、全ての不安や恐怖に有効というわけではないので注意が必要です。

研究の結論

この研究は、特定の恐怖症に対する治療が他の恐怖症の緩和にも寄与する可能性を示しています。

ただし、これはあくまで一つの研究結果であり、個々の症状や状況により結果は異なる可能性があります。そのため、具体的な治療法や対策については、専門家の意見を求めることをお勧めします。

参考文献

Kodzaga, I., Dere, E. & Zlomuzica, A. Generalization of beneficial exposure effects to untreated stimuli from another fear category. Transl Psychiatry 13, 401 (2023).

Generalization of beneficial exposure effects to untreated stimuli from another fear category - Translational Psychiatry
Previous research has shown that fear associated with one stimulus often spreads to other stimuli with similar perceptual features as well as across different s...
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