あなたのためは自分のため?
「こうやって厳しく言うのはあなたのためだ」というようなセリフがあります。子供や部下を叱るときに使われる文句です。
しかし別の見方をすると、「他人のためではなく、自分のために言っている」という風に捉えることもできます。
相手の成長を願うのではなく、自分の望みを叶えたりストレスを発散しているために他人を叱っているのではないか?ということですね。
というわけで、果たして実際に人を叱る人の心理はどういうものか?ということについて、今回は解説していきます。
期待する部下にしか上司は怒らない?
今回紹介する研究の調査対象は会社員の人たちだったのですが、それによると、派遣社員や契約社員のような短期的な雇用だったりそのうちいなくなる可能性が高い従業員に対しては上司はあまり厳しいことはせず、長く会社やチームに居残る可能性の高い正規雇用の会社員に対してだけ厳しい言動を取る!ということがわかりました。
これはアメリカのカリフォルニア州立大学のケビン ラムデ博士の研究です。ちなみに上司が厳しくするのは相手が憎いのではなく、今よりも成長して欲しいからだそうです。まさに「厳しくするのはあなたのため」ってやつですね。
でも相手を叱っても効果はない?
もちろん、この研究結果を受けて「そっか。いつも私が怒られるのは私のことを思ってのことだったのか」とプラスに捉えて今度から上司を見る目が変わってバリバリ仕事ができるようになるのであれば問題ありません。それはとっても良い影響ですよね。
しかし、「成長して欲しいから厳しくやっている」からと言って、その行為がうまく働いて人が実際に成長するようになるのかというとこれは別の問題です。
なので、もしこれを読んでいるあなたが誰かを注意する側になる場合は気をつけてください。
以前の記事でも話しましたが、人は叱っても反省しないという論文もありますし、ピグマリオン効果といってわかりやすく相手に期待をかけるという心理効果もあります。
ですので、叱るよりも相手の心を気持ちよく運べる説得話法を学んだ方が賢明かもしれません。
怒られたときはどう考えるべき?
つまり、「よく怒られるな〜」感じている人は「これは愛だ!私のことを想って言ってくれてるんだ」と利用する方法もありますし、「そんなふうに叱っても意味ないのに」と悪い心理的影響を呑気にかわすこともできるということです。
あるいは考えを割り切って、「会社は成長する場所。怒られているかどうかは関係ない。
相手の言葉から成長するためのヒントを手に入れることが大切だ」と論理的に考えられたら、ストレスが変に溜まることはないと思います。
怒られるのが特に苦手な人は
しかし、もちろん、こういうことが実際にできるかどうかは人の性格や環境の状態によります。
ですので、現状もしこういう割り切り方ができないのなら、自らの心の許容範囲を超えないようにあまり怒られない環境に身を置く方がいいかもしれません。
そういう場合も、新しいチャレンジをするチャンスと捉えることができますからね。自分の成長と健康のために行動することが大切です。
子供の教育投資の基本になるのは親自身の自己投資です。人は周りの人から影響を受けますが、親の忠告は大した効果を持ちません。
しかし、親の行動には影響力があります。子供は親を見て、いいなと思った事を受け継いでいきます。
また親が自己投資していないと、教育資本の質を理解できないのです。
— 心理学博士ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2018年10月24日
成長につながる叱責かどうか
どちらにせよ、自分が実際に成長しているかどうか、そして無理をして心や体の負担になっていないか、という自分なりの判定基準を持っておくことが大切です。
それがあれば相手が正しいのか?(相手の言葉に本当に愛が隠れているのか?)、自分が正しいのか?の判断ができますからね。
あなた自身が上司や親という立場である時には、今回の研究結果のことを踏まえて、相手に行動改善の旨を伝える時には叱るという選択肢は外したほうがいいですね。
上司は成長して欲しい人にしか厳しくしない
しかし叱責が成長に役立っているかどうかは話が別。見極めが必要