- ネガティブになると思考力が上がる
- ネガティブな人は最適な戦略を取れる
- ネガティブになると忍耐強くなる
- ネガティブな方が記憶力、噂の判断能力が上がり、差別もしにくくなる
- 無理に明るくならなくてもいい
- ネガティブとポジティブの使い分け方
- 自分がネガティブすぎると感じたら?
- 参考論文
ネガティブ思考にもメリットはある
やたらに忌み嫌われてしまっているネガティブ思考ですが、実はこれにもきちんとメリットというものがあります。
ただ無意味に気分が落ち込んでしまうというわけではないのですね。それも当然で、本当にデメリットだけだったなら、すでに進化の過程で取り除かれているはずで、ここまで一般的な現象として残っていないですからね。
つまり、気分が落ち込んだり暗いことを考えてしまうのには、生きる上で重要な理由が隠されているのです。
ですので大切なのは、ネガティブ思考を完全排除することではなく、ネガティブ思考の意味と使いかたを理解し、自分の生活に合わせて使いこなせるようになることなのです。
ネガティブになると思考力が上がる
まずネガティブ思考のメリットのひとつとして、人がネガティブ思考になると思考力が活発になることがわかっています。不安を感じると、考えることが得意になるのですね。
たしかにネガティブな人って、あれこれと想像したりすごくよく物事を考えていますよね。
私たちはよく、「考えすぎて眠れない」といった状態になったりもしますが、ネガティブなことを考えているときはそれくらい頭の中が活発化しているんです。
ネガティブな人は最適な戦略を取れる
2011年におこなわれたバーゼル大学(スイス)のベッティーナ・フォン・ヘルヴェルセン、クラークソン大学(アメリカ)のアンドレアス・ヴィルケ、スタンフォード大学のティム・ジョンソン、ミュンヘン工科大学(ドイツ)のガブリエレ・シュミット、シャリテ病院(ドイツ)のブルクハルト・クラップ博士らの研究報告によると、鬱病の被験者は、鬱病でない被験者に比べて、最適戦略にはるかに近い戦略をとる傾向があった、とあります。
この最適戦略というのは、「現状考えらえる上でのベストな選択」という意味です。つまり、ネガティブな人はそのとき一番良い行動をとることができるということですね。
一方で、精神が健康な被験者の場合には、より怠惰になる傾向があり、十分な数の選択肢を検討しませんでした。
つまり、健康な被験者は、考えることはほどほどに早く決断をしてしまって、そのために問題を間違える傾向があったんですね。
ネガティブになると忍耐強くなる
これに対し、鬱病の被験者は、選択肢を検討し続けようとする傾向がはるかに強く、タスクの成績がはるかに良くなりました。
健康な人はすぐに考えるのをやめて決断を急ぐに対し、ネガティブ志向の人は「本当にこれが正解なのか?」と粘り強く考え続けたというのです。
ネガティブ志向の人は思考力が上がっているのと同時に、答えにたどり着くまでの忍耐力も上がっていたんですね。
忍耐力や思考力は目標達成できるかどうかにも大きく関わってくる能力ですので、適度に悲観的な思考ができる人の方が目標達成率が高いのです。
ネガティブな方が記憶力、噂の判断能力が上がり、差別もしにくくなる
また、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)心理学部の社会心理学者ジョー・フォーガス博士の2005年の研究によると、憂鬱な気分に陥った被験者のほうが、噂話の正確さを判断したり、過去の出来事を思い出したりする課題の成績が良いうえに、知らない人をステレオタイプ的に分類する傾向が大幅に低い、といった特徴が見つかったそうです。
つまりですね、ネガティブな方が記憶力が上がるうえに、話が嘘かどうかの判断力も上がり、人を差別するということもなくなるということなんですね。
あれ? なんだかちょっとネガティブ思考のことを見直してきた気がしませんか?
これは要するに、憂鬱な気分だからと言って単純に悪いものとは決め付けられないということなんですね。
ポジティブ思考も使い方を間違えれば不幸な結果になってしまうように、ネガティブ思考も正しい使い方をすれば良い結果をもたらしてくれるのです。
不安や緊張といったネガティブな感情は決して悪いものではなく、否定しなくていいものです😌
幸せになるためには、自分が感じている不安や緊張を理解して受け入れる必要があります💡幸せになろうとするだけではダメなんですね⚠️
時には立ち止まって自分の感情を素直に受け入れましょう🙆♀️
おやすみ😪
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年1月23日
無理に明るくならなくてもいい
これらの研究から学べることは、自分が憂鬱な気分になっているからと言って、そこまで悲観的になったり無理に明るくなろうとしなくてもいいってことです。
もちろん、うつ病のような深刻な病状の場合は別ですし、ネガティブ思考にデメリットがあることも事実です。
しかし、ネガティブだろうとポジティブだろうと、本当に大切なのはその思考法を状況に合わせてうまく使いこなすということなんですね。
ネガティブとポジティブの使い分け方
結局のところ、ネガティブやポジティブという人間の気分も、物事を解決するためのひとつのツールに過ぎないのです。
ですから、ネガティブなときにはその気分を利用して物事を深く考えて、それをメモしておき、あとになってポジティブな気分やニュートラルな気分になったときに考察してみるというのがおすすめです。
そうすることで現状に甘えすぎず、かといって調子に乗って危険なことをしすぎるということがなくなります。
自分がネガティブすぎると感じたら?
しかし、いくらネガティブ思考は役立つとは言っても、ネガティブに振り回されたり過度にネガティブ感情を感じてしまうと生活や作業に支障が出てきます。
ですので、そういう困ったことが起きているレベルでネガティブな感情を持ってしまっている人は、マイナス思考停止法やマインドフルネス瞑想などを利用して、ネガティブな感情を弱めてみてください。
ほかには、心理療法の現場でも使われる、認知行動療法もおすすめです。参考にしてみてください。
人はネガティブな気分だと、思考力+忍耐力+嘘を見極める能力が上がるネガティブ思考のほうが単純な差別をしなくなる課題の最適解を見つけるにはネガティブ思考の方が向いている
参考論文
Clarkson University. (2011, May 4). Positive effects of depression. ScienceDaily. Retrieved June 12, 2022
Forgas, J. P. (2007). When sad is better than happy: Negative affect can improve the quality and effectiveness of persuasive messages and social influence strategies. Journal of Experimental Social Psychology, 43, 513-528.