他人の不幸を喜び、成功に嫉妬する心理
日本でも「他人の不幸は蜜の味」と言いますが、実際に他者が幸せになると私たちは不幸を感じ、他者が不幸になると私たちは幸福になります。
何とも嫌な気持ちになる心理ですが、これにもきちんとした理由が存在しています。
というわけで、今回はこの他人の不幸を喜び、成功に嫉妬する心理について解説していきます。
お金持ちの隣に住むと夫婦仲が悪くなる
ハーバード大学のエルゾ・ラットマー教授が2005年におこなった研究では、周りの人が自分よりも多くの金額を稼ぐときに気分が悪くなるかどうか?を調査しました。
すると、隣人の収入が増えるにつれて、自分の収入は変わっていないのにもかかわらず、自己申告による幸福のレベルが低くなることがわかりました。
さらに、このネガティブな影響は結婚生活にも及びます。なんと裕福な人のご近所に住んでいる夫婦では、口喧嘩の数が多くなることもわかったのです。
周りの人が幸せになると幸福度が下がるだけではなく、イライラして喧嘩も増えてしまうのです。おそろしい話ですね。
嫉妬が生まれる進化心理的な理由
「人の幸せが喜べないなんて、なんて嫌な性格なんだ!」と感じてしまうかもしれませんが、このような心理が存在する理由は進化の過程にあります。
進化の過程で、私たちは自分たちの子孫を残す競争のためにお互いに食物や異性を奪い合ってきました。
このため、誰かが食料を多く確保すれば、それだけ自分が確保できたはずの食料がなくなり、誰かが自分よりもモテてしまうような魅力を手に入れれば、それだけ自分が異性を獲得する機会も少なくなってしまいます。
つまり、文字通り、他人の不幸は自分の幸福となり、他人の幸福は自分の不幸に直結してしまうのです。
いわゆるゼロサムゲームというものですね。ゼロサムゲームでは、誰かの富を奪うことでしかこちらの富を増やすことはできません。
嫉妬心が生み出すプラスの心理効果
進化論的に見れば、他者の不幸は自分の幸福につながり、自分たちが子孫を残す可能性がより高まるため、他者を妬んだり不幸を喜んだり気持ちが現代にまで受け継がれてきたのです。
逆に言うと、他者に嫉妬するからこそ、私たちは努力し成功することができるのです(ほかにもパートナーの浮気を防止する効果もあります)。
ガンダムを生み出した富野由悠季さんも、同業者や後輩の成功に対してかなり嫉妬していますが、同時にライバルに触発されることで自らも新しい作品を生み出しています。
人間が嫉妬の感情を持つようになったのは、パートナーの浮気を防止し、自分のところにとどまらせるためです。なので、適度な嫉妬心を見せたほうが、好きな人はあなたのことをより強く想ってくれるようになります。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年11月22日
自分に近い人にほど嫉妬しやすい!
ただし、この嫉妬の心理には重要なポイントが一つあり、タイトルにある通り「自分に近い人にほどより嫉妬する」ということです。
このため、どこかの知らない誰かの成功よりも、隣人や知人や同僚の成功に対してより不快感が生まれ、彼らの不幸を喜んでしまうのです。
参考論文
Erzo F. P. Luttmer, Neighbors as Negatives: Relative Earnings and Well-Being, The Quarterly Journal of Economics, Volume 120, Issue 3, August 2005, Pages 963–1002,