第一印象を信頼すべきか?
世間一般では、意思決定や行動を検討するときや選択に悩んだときには、「最初の直感に従うとよい」というふうに考えられています。
この信念は日本だけではなく、アメリカなどの欧米文化でも同じです。「最初の直感の正しさを信じる」という心理的傾向は人類に共通なのですね。
しかし、その方法が必ずしも正しい答えや結果に導いてくれるとは限らないこともわかっています。私たちはそのほとんどを忘れていますが、最初の直感が外れていたという場面も多々経験しているのです。
直感が使えるときと使えないときを理解する
直感は正しいときもあれば正しくないときもあります。
なので、大事な意思決定をするときにより賢明な選択をしたいのであれば、最初の直感、つまり第一感が正しいときとそうでないときを見極めることが大切です。
最初の直感が適切な方法として機能する科学的な条件を知ることができれば、私たちはより良い判断ができ、幸せになることができますからね。
というわけで、今回は「第一感の心理」について解説していきます。
判断力を鈍らせている心理的原因その1
まず、私たちの判断を難しくしているものに心理バイアスの存在があります。
最初にも言いましたが、私たちの本能は、最初の直感が正しいことを無意識に願ってしまっています。
このような心理がある理由は、最初の直感が正しいほうが、認知的リソースを少ししか払わずに済み、労力を少なくしながらも多くの利益を得ることができるからです。
わかりやすく言うと、「直感に従うほうが、難しいことをあれこれ考えるよりも楽だから!」ということですね。安直に思えますが、人間であれば誰しもこう思ってしまいます。
幼いころから適切な人間関係を築けていた人は、大人になってからもその直感に従うことで良質な人間関係を維持できます。しかし、そうではない人は、直感に従うと余計に孤独になります。つまり、人付き合いが苦手な人ほどマニュアルに沿って行動した方がいいのです。マニュアルも使いようです。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2021年2月26日
判断力を鈍らせている心理的原因その2
さらにもうひとつの理由として、私たちが持つ「望ましさのバイアス(希望的観測)を満足させることができるから」というものもあります。
私たちの心理は本能的に希望を持つようにできているのですが、直感を信じることでこの気持ちが満たされるために、最初の直感を信じたくなり、判断を間違えてしまうことがあるのです。
たとえば、私たちは宝くじを買ったら自然と大金が手に入るところを想像してしまいます。この想像と結果が一致すると気持ちが良いので、最初の直感を信じてしまうのです。
誰でも「ほら、やっぱり!だから言ったでしょ!」と思った経験はあると思いますが、こんな感じですね。こうしたことがあると、優越感も感じられてなんとなく気持ちが良いですよね。
これらの心理的なバイアスがあることで、最初の直感に対する信頼度や価値が偏って高くなっているのです。
まだ話は続きますので、直感の正しい使い方についてはまた次回に解説していきます。
参考論文
Grüning, D. J., & Krueger, J. I. (2021). Strategic thinking: A random walk into the rabbit hole. Collabra: Psychology, 7(1): 24921.
https://doi.org/10.1525/collabra.24921
Think Again: The Power of Knowing What You Don’t Know (English Edition) Kindle版
英語版 Adam Grant (著)
Kruger, J., Wirtz, D., & Miller, D. T. (2005). Counterfactual Thinking and the First Instinct Fallacy. Journal of Personality and Social Psychology, 88(5), 725–735.
https://doi.org/10.1037/0022-3514.88.5.725
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい 単行本 – 2006/2/23
マルコム・グラッドウェル (著), 沢田 博 (翻訳), 阿部 尚美 (翻訳)