性格を変えることによる副作用について
他の人との交流を深めようとする人は、他の人とのポジティブな交流を経験することで、最終的に気分を高めることができます。
この方法は、外向的な人が落ち込んでいるときに有効なのは間違いありません。
外向的な人たちは、気分が落ち込んでいるときでも、社会的な場に戻ることで自身の気分を高められることを直感的に知っているからです。
しかし、この方法は、もともと内向的な性格の人にはあまり効果的ではないかもしれないという指摘もあります。それは内向的な人にはデメリットがあることが確認されているからです。
内向的な人でも、たしかに普段の自分よりも外向的に振る舞うことで気分が良くなります。
ただし、その副作用として、明るい演技をしたあとで精神的に疲れることになる可能性がいくつかの研究から示唆されているのです。
外向的なふりをすると疲れがたまる?
実際に2017年のヘルシンキ大学のソイントゥ・ライカス、ヴィル・ユハニ・イルマリネン博士らの研究では、外向的な行動は、ポジティブな気分と倦怠感の低下に関連していましたが、3時間経ったあとで倦怠感の増加が確認されています。
また、過去の研究によると、私たちは自分の本当の性格に従って行動するときにもっともよい精神状態になることがわかっています。
本来の自分ではない別人のように振る舞うことは努力が必要で、長期的には精神的な疲労につながってしまうのです。
実際、一部の心理学者は、内向的な人に本来の自分よりも外向的になるように仕向けると、逆効果になると警告しています。
この考え方によると、内向的な人が意図的に普段よりも外向的に振る舞うと、その場では少し気分が良くなるかもしれませんが、その後、疲労感やストレスが増して「後々、代償を払うことになる(pay for it later)」というのです。
ただし、これらの研究は数時間後などの短期的な影響力を調べるものばかりなのも事実です。もっと長期的に見てみるとどうなるのでしょうか?
長期的に見れば元気なふりは内向的な人にも効果がある!
結局のところ、内向的な性格の人たちも明るくふるまったほうが良いでしょうか?
実は以前に解説したベルギーの研究では、このことも調べられています。
この研究では、外向性とポジティブな気分、そして幸福度は同時に上昇したり下降したりすることが判明しました。
この研究では、「外向性を装うと後払い現象が起こる」という仮説を裏付ける証拠は見つかりませんでした。
つまり、「内向的な人が意識して外向性を高めた数時間あと、または数日あとで気分が低下する!」という一貫したパターンは見られなかったのです。
むしろ、この研究で見つかった唯一の一貫したパターンは、「ポジティブな気分と幸福のレベルは外向性と比例して上下する!」ということだけでした。
元気なふりでも幸せになれる理由
外向性を装えば幸せになれる心理的な理由は、明るくふるまうことで気分が高揚し、テンションがハイになったことによる影響で積極的な性格になれるからです。
結局のところ、私たちは幸せなときにはより饒舌でエネルギッシュな性格になり、悲しい気分のときにはそうはなれないのです。
外向性を装うアプローチは、こうした感情のフィードバック・プロセスによって機能すると考えられています。
まわりの人たちはあなたの幸せな顔に好意的に反応し、その楽しい交流があなた自身の気分を高まっていくことで、心の中の気持ちと他者に見せている幸せな顔が一致するようになるのです。
これは面白い心理なのですが、明るい性格の人と一緒に過ごすと気分が明るくなるだけではなく、健康にもなります!自分はちょっとネガティブ気味だなぁと感じる人は、明るい友達を作ってたまには一緒に遊びましょう!!!
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2020年12月21日
幸せそうな人に幸せが訪れる
今回の研究で得られた重要な発見は、本来の自分の性格から大きくはずれて外向的なふりをしても、後で疲れたり落ち込むことはないということです。
まずは幸せそうな顔をして、人との交流を楽しんでいるふりをしてみてください。
そして、そうしたふるまいが本当に気分を高めてくれるかどうかを自分自身でたしかめてみてください。少なくとも、それで損をすることはありませんから。
fake it till you make it!!
参考論文
Leikas, S., & Ilmarinen, V. J. (2017). Happy now, tired later? Extraverted and conscientious behavior are related to immediate mood gains, but to later fatigue. Journal of Personality, 85(5), 603-615. doi:
https://doi.org/10.1111/jopy.12264
Kuijpers, E., J. Pickett, B. Wille, and J. Hofmans. “Do You Feel Better When You Behave More Extraverted Than You Are? The Relationship Between Cumulative Counterdispositional Extraversion and Positive Feelings.” Personality and Social Psychology Bulletin, (May 2021).