自尊心と人生の意味
心理学用語に自尊心という言葉があります。
これは、自分自身を大切に思い、肯定する気持ちのことです。自尊心が高い/低い、自尊心がある/ないなどと言ったりしますね。
一般的に、この自尊心がない人は自分自身を尊重できないために、自分の人生に対しても「意味のないものだ」と思ってしまう傾向があります。
自尊心が低い人は自分自身に対して肯定的な態度が取れないために、「人生に意味を持つ!」という感覚も生まれにくくなってしまうのです。辛い話です。
意味のない人生に対処する方法
当然ながら人生に意味が持てないと、何事もやる気が起きなくなってしまい、活力もなくなります。
そうなると幸福度にも健康度にも悪影響を及ぼすことになるので、自尊心が低い人は心身の問題を抱えやすくなってしまうのです。
そこで、「人生の意味」に対する不安を払拭する簡単な方法を探してみたところ、オランダの研究者が画期的な方法を見つけ出してくれたのです。
その方法とは、何とただの軽いボディタッチでした。
ボディタッチで不安が減少
2013年に行われたアムステルダム自由大学臨床心理学部のサンダー・クール、マンディ・タイエフ・A・シン、アイリス・K・シュナイダー博士らの研究によると、私たちは、ほんの少しの軽いものであっても、他者からのボディタッチを受けることで、実存的な不安に対処できるようになるようなのです。
実存的な不安というのは哲学用語で、「自分は何のために生きているのか?」ですとか「私には存在価値がないのではないか?」というように、自分の存在に対する不安や不安定さのことです。
先ほども言った通り、自尊心が低い人ほどこの実存的な不安に襲われがちになってしまいます。しかし、この不安を軽いボディタッチでも改善できるというのです。
たった1秒触れただけで効果あり
この実験では、まず大学のキャンパスを歩いている学生に声をかけ、「死の不安」に関するアンケートに答えてもらいました。
その際に、一部の学生にだけ彼らの肩甲骨のあたりに研究者が1秒ほど手を触れてから、アンケートに答えてもらったのです。たった1秒のボディタッチで死に対する不安が変わるかどうかを調べたのですね。
すると、肩甲骨を触れられた学生は、そうでない学生よりも「死の不安が少ない!」とアンケートに答える傾向があったのです。
知らない人からのたった1秒のふれあいだけでも、不安を和らげるのに役立つのは嬉しいですね。
身体的なふれあいで社会的なつながりも増加
また、「実験参加者に自分の死について考えてもらう」という2つ目の実験では、研究者に軽く体に触れられたグループだけ「社会的なつながり」が増加したという結果が出ていました。
死への不安を減らすだけではなく、社会的なつながりを増やす効果もあるのは良いポイントですね。
自尊心が高い人には効果なし
ただし、元から自尊心の高い人たちはこのボディタッチによる影響を受けなかったとのことで、不安感が強い人にだけこの心理効果は発動するようです。
また、死への不安感が強い人ほど対人接触に対する欲求が大きかったとのことで、不安な人ほど他者とのふれあいを求めているようです。
人生に迷ったら人付き合いを増やそう!
もちろん、健康的な人であっても死への恐怖や実存的な不安は抱きます。
また時には、「自分は何のために生きるのか?」という感じで人生の意味を見つけるのに苦労もします。
そんな不安を抱えた時には、何も宗教的な儀式や思想に頼らなくても、単純に親しい人たちとボディタッチをしあえばいいのです。
私たちは人と触れあうことによって死への不安を払拭して安心感を得ることができるのですね。
というわけで、何となく最近、人生に虚しさを感じていたり人生の意味に悩んでいるようでしたら、人とのふれあい時間を増やしてみてください。
参考論文
Sander L. Koole, Mandy Tjew A Sin, Iris K. Schneider (2013) Embodied Terror Management: Interpersonal Touch Alleviates Existential Concerns Among Individuals With Low Self-Esteem, Psychological Science