心が病むと衝動的な性格になる
2019年におこなわれたマクマスター大学のマイケル・アムルング、ランディ・マッケイブ教授、カンザス大学のデレク・リード博士らが依存症や中毒症状について調べた研究によれば、ある性格特性が精神衛生上の問題と関連していることがわかっています。
その性格特性とは、衝動性(Impulsivity)です。衝動性とは、別の言い方をすれば、目的のために我慢すべきことでも我慢することができないということです。
ある人が衝動的な性格であることは、その人の精神的な健康状態が悪くなっているサインである可能性があるのです。

目先の欲求を我慢できなくなる
衝動的な人は、後で得られる大きな報酬よりも、すぐに得られる小さな報酬を好む傾向があります。
また、衝動的な人は、後先考えず、その場の思いつきや感情で行動する傾向があります。
言い換えれば、衝動的な人は、後先考えずに今すぐ楽しみたいのです。たとえ待つ方が賢明な判断だとしても、彼らはその欲求を抑えることができないのです。
精神疾患を持つ人はすぐに行動してしまう
今回紹介する研究は、2018〜2019年におこなわれた43の研究レビューのデータをメタ分析にかけたものです。
この研究によれば、うつ病、双極性障害、統合失調症、摂食障害、境界性パーソナリティ障害といった精神的な問題を抱える人たちは、衝動的な性格を持っている可能性が高いことがわかっています。
心理学では、通常、このような衝動性を「遅延割引(Delay Discounting)」のテストによって測定することができます。
遅延割引とは?
遅延割引とは、人は報酬を受け取るまでの時間が長ければ長いほど、その報酬をより割引く(時間を置けば置くほど報酬の価値が下がる)傾向があるという心理バイアスの一種です。双曲割引(Hyperbolic discounting)や、時間選好(Time preference)とも言います。
つまり、心理的には、3週間後の10ドルよりも、今すぐの5ドルの方が直感的には価値があるように感じられるのです。
これにより経済学的に見れば、3週間後の10ドルのほうが価値が高いのにもかかわらず、私たちは今すぐに手にできる5ドルのほうを選んでしまいます。
一方で、満足感を遅らせることができる人は、報酬を待つことがより簡単にできるようになります。
我慢しすぎるのもメンタルに悪い
ただし、精神衛生上の問題を抱える人々の中では、拒食症は例外的な存在でした。
拒食症の人は、ほかの精神疾患者とは逆に、過剰に自己制御的な判断をとる傾向があります。
つまり、彼らは衝動的な性格とは反対に我慢しすぎるのです。
拒食症とは、食行動に対する非常に高いレベルの自制心を特徴とする障害なのです。
多くの場合、自制心が私たちに幸福をもたらしてくれる能力であることを考えるとこれは意外に感じますが、自制心が高すぎることで彼らは障害を負ってしまっているのです。
依存、中毒、衝動などを覚えるものがあったら、それについて文章を書いてみるといいです。例えば、ゲームがやめられないなら、「ゲームとは何か?」というテーマについて思いついたことを書きます。書くことで客観的に対象を見ることができるようになり、コントロールしやすくなります。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) July 23, 2022
衝動的な性格に変わってきたら習慣を見直そう
というわけで、衝動性とメンタルの病みについて解説しました。
もしも衝動的な気持ちが抑えられなくなってきたら、それはあなたの心が疲れている緊急サインなのかもしれません。
例えば、お菓子を食べすぎる、お酒を飲みすぎる、買い物をし過ぎる、話しているとカッとなってすぐに人と喧嘩してしまう、といった行動が出てきたら注意が必要です。
そのときは今の生活習慣を見直しつつ、ゆっくりと休息をとりましょう。
参考論文
Amlung M, Marsden E, Holshausen K, Morris V, Patel H, Vedelago L, Naish KR, Reed DD, McCabe RE. Delay Discounting as a Transdiagnostic Process in Psychiatric Disorders: A Meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2019 Nov 1;76(11):1176-1186. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2019.2102. PMID: 31461131; PMCID: PMC6714026.