恐怖したメンタルを回復させる
不安や恐怖といった感情に支配されそうになった時に役立つ心理テクニックがあります。
それは人が持つ愛情を思い出すことです。ここだけ読むと何ともキザっぽい話なのですが笑。
人が誰かに愛され、大切にされていることを思い出すことで、脅威的な状況に対する脳の反応が弱まることが研究で明らかになっています。
これは自分自身の話でなくてもOKです。
愛情を思い出すことで恐怖が減少する
2014年におこなわれたキングスカレッジロンドン精神医学研究所のルーク・ノーマン、ナタリア・ローレンス、アンドリュー・アイレス、アブデルマレク・ベナッタヤラ、アンケ・カール博士らの研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、実験参加者にいくつかの画像を見せて、扁桃体がどのように反応するのかを測定しました。
扁桃体は、私たちがどのように感情を処理するかに重要な役割を果たしている構造体です。
特にマイナスの情動に深くかかわっていまして、不安になると活性化することで知られています。このため、扁桃体の反応を制御することで不安や恐怖などのネガティブな感情を減らすことができるというわけですね。
そして、42人の健康な男女を対象に実験した結果、人が愛され、大切に扱われている写真(例えば、愛する人を抱き締めている写真)を短時間見せただけで、脳の脅威反応が弱まることを発見しました。
つまり、愛され、大切にされていることをごく短い時間でも思い出せることで、扁桃体の脅威反応が抑えられ、恐怖が減少するのです。
愛情を感じる光景を目にするだけで効果がある
さらに、この愛情効果は、特に不安を抱えていてネガティブな感情が強い人に効果的でした。
また面白いことに、愛情を示す癒しの写真には、人々が意識的に注意を向けていないときでも効果がありました。いわゆるプライミング効果ですね。
つまり、意識して愛情が感じられるものに触れなくても、例えば、愛する家族や恋人の写真を待ち受けにして自動的に見られる状態にしていても効果があるのです。
あるいは街中で仲良しな家族連れを見かけるだけでも効果が期待できます。
もちろん、自分から積極的に愛情を感じる活動に関与するほうが望ましいですが、即席の方法としては可愛い動画を見るだけでもいいのです。
研究者はこれを愛着保障プライミング(Attachment-security priming)と呼んでいます。
脳内では愛情を感じるシステムとセキュリティーシステムが結びついているのですね。
安倍元首相暗殺のニュースはしばらく続きますが、このようなショックなニュースを見続けると、PTSDのような症状を発症する危険があります。しかも発症リスクは意外と高く、ニュースを見たうちの4分の1の人たちに症状が表れます。大きな話題なので難しいのですが、心の管理には気を付けて下さいね。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2022年7月12日
PTSD、トラウマ体験を和らげる
心的外傷後ストレス障害(PTSD)をはじめ多くの精神疾患は、脅威を感じる情報に対する過敏な反応を特徴としています。
恐ろしいものに対して、つい大袈裟に反応してしまうのですね。
これにより、扁桃体が強く活性化し、過剰な負の感情反応を経験する一方で、負の感情を調節して自分自身を治癒する心の回復能力を抑制してしまいます。
落ち込むだけではなく、立ち直ることも難しくなってしまうのです。
しかし、今回の研究成果によれば、例えば、心理的トラウマからの回復のために、ソーシャルサポートが大きく役立つ可能性があります。愛の力は偉大ですね。
最近トラウマ体験をした人は、愛情を思い出すことで苦痛の感情を減少させることができるのでぜひ試してみてください。
参考論文
Luke Norman, Natalia Lawrence, Andrew Iles, Abdelmalek Benattayallah, Anke Karl, Attachment-security priming attenuates amygdala activation to social and linguistic threat, Social Cognitive and Affective Neuroscience, Volume 10, Issue 6, June 2015, Pages 832–839,