【チャルディーニ賞】大人が理解を示すと子供の犯罪率が劇的に低下する

アサーティブネス・自己表現
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少年再犯率を半減させた研究

 

今回は、優れた社会心理学の研究に与えられるロバート・B・チャルディーニ賞の2022年の受賞研究について解説していきます。

 

これは2021年におこなわれた、スタンフォード大学心理学部のグレゴリー・M・ウォルトン、キャスリン・レミントン・カニンガム、ダニエル・ハースト、エリザベス・ワイツ、ジェニー・L・エバーハート、カリフォルニア大学バークレー校心理学部のジェイソン・A・オコノフア、ミシガン大学心理学部のアンドレス・ピネド、オハイオ州立大学心理学部ジュアン・P・オスピナ、少年司法センターのハティ・テイトの研究で、少年の再犯率について調べた心理実験です。

 

この実験で介入をおこなったグループでは、少年の再犯率を半分以上低下させることに成功しました。これは大成功と言ってもいいのではないのでしょうか。

 

少年に目標と価値観を確認させる

 

実験は、47人の子どもたちを対象に、彼らが収容施設を退所した直後に、彼らの通う学校で、研究チームのメンバーと1対1の面談を行うことから始まりました。 

 

研究チームのメンバーは、将来、同じ境遇にあった子どもたちを助けることができるよう、「あなたから直接もっと学びたい」と言って会話をはじめました。

 

次に研究者は、他の生徒からのアイデアをもとにつくられた価値観のリストを生徒に渡しました。

 

その中には、「両親に誇りに思ってもらえるようになる」、「弟や妹の良いお手本になる」、「良い仕事に就くためのスキルを身につける」といった文言が含まれていました。

 

生徒はこれらの中から、自分にとって最も重要な価値観を選び、その理由も述べてもらいました。 

 

そうすることで少年たち自身に自分の目標と価値観を自覚させたのですね。

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年齢の近い先輩の話を聞かせる

 

次に、生徒たちは、他の先輩たちの話を聞きました。その中で、先輩たちが直面した課題や、学校の大人たちとの関わりがどのように役立ったかを学びました。

 

例えば、この介入では、「自分の背中を押してくれる人がいれば、物事はずっとやりやすくなる。自分をコントロールできるようになる」というような話がされました。 

 

また、「大人と信頼関係を築くことは必ずしも簡単なことではないが、粘り強く続けることで関係が築ける」といった話もありました。

 

そして、自分にとって重要な存在となりうる大人との関係を築くにはどうしたらいいか、自分の体験談やアイデアを話してもらいました。

 

学校の先生と少年をつなぐ

 

最後の介入では、研究者は子どもたちに、自分を助けてくれそうな学校の先生の名前を挙げてもらいました。

 

そして、自分がどんな人間で、何を大切に思っているのか、学校で直面する問題でその先生に助けてほしいことは何かなど、自分についてその先生に知っておいてほしいことを手紙にして書いてもらいました。

 

次に、研究者は先生にその手紙を届けました。その手紙には、生徒が提供した情報と、彼らの希望や夢が書かれていました。

 

また、その手紙には、教師が子供の人生において果たす重要性が研究者によって強調されていました。

 

「ご存知のように、どの生徒の成長においても最も重要な要素の一つは、学校の大人と信頼できる、前向きな関係を持つことです。そして、○○(生徒名)は、あなたが自分のために信頼できる大人になってくれることを望んでいます。」

 

このようにして、生徒が個人的にその先生を選んだことを強調してありました。 

 

再犯率が 69% から 29% に

 

さて、以上の介入をおこなったところ、次の学期までの少年の再犯率を 69% から 29% にまで減らすことに成功したのです。

 

これは、少年によって犯される可能性のあった犯罪の数を半分以上も減らすことができたとも言えます。

 

少年と大人との間に信頼関係を築くことがここまで重要なことだとは、頭でわかっていても結果の大きさに驚いてしまいますね。

 

少年の社会復帰に必要なもの

 

この研究で、犯罪を犯した子供の社会復帰に役に立つポイントが2つ判明しました。

 

1つ目のポイントは、少年の自分の目標や価値観を明確にすることで、社会復帰後に「何をしたいか(夢や目標)」「どんな価値観を大切にしたいのか」を少年の中にはっきりさせることが重要でした。

 

そして2つ目のポイントは、その目標に向かって前進するのを助けてくれる学校の大人たちとの信頼関係を築くことです。

 

また、この研究では、研究者が学校と子供との間に入る仲介者になったこともよかったのかもしれません。

 

というわけで、大人の人は不良少年と出会ったときには、上記のようなポイントを踏まえて彼らの支えとなってあげてください。

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参考論文

 

Walton, Gregory & Okonofua, Jason & Cunningham, Kathleen & Hurst, Daniel & Pinedo, Andres & Weitz, Elizabeth & Ospina, Juan & Tate, Hattie & Eberhardt, Jennifer. (2021). Lifting the Bar: A Relationship-Orienting Intervention Reduces Recidivism Among Children Reentering School From Juvenile Detention. Psychological Science. 32. 095679762110138. 10.1177/09567976211013801. 

https://doi.org/10.1177/09567976211013801

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