【YouTube】動画を見るだけで学べた気になる!が、実際はできていない

ゲーム・遊びに関する心理学
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すぐ何でもできる気になる心理

 

ソーシャルメディアの台頭により、私たちは教育的なビデオでも簡単に録画し、共有し、そこに自由にアクセスできるようになりました。

 

最近では新しいスキルや知識を習得するために、YouTubeやInstagramに上がっているチュートリアル系の動画を見ているという人も多いかもしれません。

 

と言うよりも、私もその一人だったりします。本を読むよりも手軽なので動画を見てよく勉強しています。

 

2018年におこなわれた研究によると、動画を視聴するとき、私たちは新しいスキルを身につけているように感じられることがわかっています。

 

しかし、実際にはそのようなチュートリアル動画の視聴は私たちのスキル習得にほとんど役立っていない可能性があります。

 

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのマイケル・カーダス、エド・オブライエン博士らの研究によれば、「他人がそれをしている光景を見れば見るほど、実際には自分の能力に変化がない場合でも、その人と同じスキルを自分もできるようになった」と感じる心理が働くことがわかっています。

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動画を見るだけで自信がアップ

 

カーダス博士は、まったく自分で練習をすることなく動画内で実演されたスキルをただ眺めることは、実際にそのスキルを実行する能力を向上させる効果があるのか?を調べるために実験をおこないました。

 

最初の実験では、1,003人の男女を対象に、チュートリアルビデオを見るか、説明書を読むか、あるいは、テーブルの上のテーブルセッティングを邪魔することなくテーブルクロスを引き剥がす「テーブルクロスのトリック」をただ頭で考えて実行するように指示しました。

 

5秒間のビデオを20回見た人は、1回見た人に比べて、このトリックを成功させる自信があることがわかりました。

 

しかし、説明書を読んだり、そのトリックについて考えたりしただけの人では、このような自信の増加は見られませんでした。

 

つまり、動画でないとスキルが向上した!という自信アップの心理効果はないのです。

 

これらの結果は、繰り返しチュートリアル動画を視聴することで、私たちの中に自己有能感を膨らませる可能性があることを示しています。

 

上達した気分はただの思い込み

 

さらに、この自信アップが実際のパフォーマンスに影響するかどうかを調べるために、新たに193人の参加者のグループでダーツ投げの能力に関するテストを行いました。

 

このときも、デモビデオを20回見た被験者は、1回しか見なかった被験者よりも多くの得点を得られると予測しました。

 

そして、より多くの回数ビデオを視聴した被験者は、ビデオを見た後で、より多くの技術を学び、より上達しただろうと考え、ブル(ダーツボードの真ん中)を得る確率も高くなるだろうと予測しました。

 

しかし、これらの認識は現実の結果とはまったく一致しませんでした。

 

ビデオを何度も見た人であっても、ビデオを1度しか見なかった人よりもスコアが上がることはなかったのです。

 

研究者らは、ムーンウォーク、コンピュータゲーム、ジャグリングなど、他の分野でもこの心理現象が見られることを実験によって確認しました。

 

どのスキルにおいても、実験に参加した人たちは、動画内で他人がこれらの技術を披露するところを見れば見るほど、自分の能力を過大評価するようになったのです。

 

自信過剰になる心理的な理由

 

なぜ、繰り返しビデオを見ることで過信が生まれるのでしょう?

 

ある実験で、手元の動きが見えないテーブルクロストリックのビデオを見た参加者は、自信過剰にならなかったことから、人は技術を行う際の具体的な手順や動作を追跡できる場合にのみ自信を持つことができるのだと示唆されています。

 

つまり、ただの観客として見た場合には思い込みは生まれず、技術を行う際の具体的な手順や動作を把握したときに、初めて私たちは自信を持つことができるようになるのです。

 

しかし、いくらその技術の詳細な手順を考えたり、道具の扱いに関する技術的な情報を学んだりしても実際には上達などはせず、この過信も消えることはありませんでした。

 

自信過剰を防ぐ方法

 

ただし、ジャグリングのビデオを見た直後に実際にピンを持って試すことができた参加者のみが、ビデオを見た後で感じていたよりも、自分の学習量が少なく、能力も低かったと間違った予測を修正することができました。

 

どうやらチュートリアル動画は、自分が実際に試してみる機会と一緒になったときに初めて役に立つようになるようです。

 

というわけで、料理のテクニックから、DIY、ゲームの技まで、ある技術に挑戦する前にインターネットで事前にヒントを調べる人は誰でも、動画の視聴後に自分の能力を過信する可能性があるのです。

 

このため、同様の技術を自分で試す前に楽観的な予測を下方修正することが大きな失敗をしないための有益な手段になります。下手をすると、学んだ気になって行動を全く起こさない!ということにもなりかねませんからね。

 

自信過剰にならないように、私も肝に銘じておきます。

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参考論文

 

Kardas, Michael, and Ed O’Brien. “Easier Seen Than Done: Merely Watching Others Perform Can Foster an Illusion of Skill Acquisition.” Psychological Science, vol. 29, no. 4, Apr. 2018, pp. 521–536, doi:10.1177/0956797617740646.

https://doi.org/10.1177/0956797617740646

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