- 歩くだけで集中力は上がるのか?
- 運動と仕事の関係を調べた実験
- ウォーキングで仕事のストレスと退屈感が激減
- 眠気覚ましと集中力アップの効果も
- 激しい運動は逆効果
- 普段は運動しない人にも効果的
- 仕事の合間にはできる歩く!
- 参考論文
仕事に飽きたら体を動かすと良い
運動は体に良いだけではなく、メンタルヘルスの改善にも役立ちます。
これはプライベートな時間に限った話ではなく、仕事中のメンタルヘルスにも良い影響を与えるのです。
研究では、歩きながら仕事をすると、やる気が上がるうえに仕事の満足度も高くなる!ということがわかっています。
歩くだけで集中力は上がるのか?
今回紹介するのは、トレッドミルデスクを使った実験です。
トレッドミルデスクというのは、スタンディングデスクとルームランナー(トレッドミル)を組み合わせたもので、歩きながら仕事ができるように設計された作業机です。
このトレッドミルデスクは海外の研究では運動の効果を調べるときによく使われていまして、「運動は仕事のパフォーマンスを上げるのか?」というような運動の影響を調べる実験では、お馴染みのアイテムとなっています。
これにより、最近では「健康に悪い!」と評判の座りっぱなしを防げるので、ダイエットや健康に良いとされているのです。
さらには、健康効果と同時に集中力アップの効果も期待されていまして、人気の実験のひとつなのです。
運動と仕事の関係を調べた実験
現在オフィスで働く人が増え続けており、仕事をしているほとんどの人は1日中ずっと座り続けているという状態です。
この習慣は、体重が増加する大きな原因のひとつとされており、心理的な悪影響も懸念されています。
そこで、2014年にインディアナ大学心理学部のマイケル・スリッター、心理学部のゼンユ・ユエン博士らは実験を行い、トレッドミルデスクがいかに私たちにメリットをもたらしてくれるのかを調べました。
実験では、180名の実験参加者を、椅子に座って仕事をするグループ、スタンディングデスクで立ちながら仕事をするグループ、サイクリングマシーンで自転車をこぎながら仕事をするグループ、トレッドミルで散歩をしながら仕事をするグループ、の4つのグループにランダムに割り当てました。
そしてそれぞれの結果を、仕事の退屈度、仕事の満足度、ストレスレベル、覚醒レベル、仕事のパフォーマンスの高さの尺度で評価しました。
さらに、参加者全員のボディマスインデックス(BMI)と運動習慣をモデレーターとして調べ、これらの変数の違いが実験の結果に影響するのかどうかも同時に調べられました。
ウォーキングで仕事のストレスと退屈感が激減
すると、トレッドミルデスクを使って歩きながら仕事をしたグループでは、他のグループと比べて、作業の退屈感が大幅に減って、脳みその覚醒度とモチベーションがアップしたのです。
さらには、ストレスレベルが大幅に低下して仕事の満足度も高くなっていることがわかったのです。
仕事が楽しくなるうえにストレスも減るというとても素晴らしい効果が認められました。
眠気覚ましと集中力アップの効果も
また、歩きながらの仕事は、脳みそを覚醒させ、眠気覚ましにもなっていました。
ちょっと想像してみるとわかりますが、体を動かすことで気晴らしにもなるのです。
仕事に飽きたらグーっと伸びをしますが、あんな感じで目が覚めるのですね。
パフォーマンスはあまり変わらなかったのですが、歩くことで頭がボケーっとしにくくなるので、集中力が切れやすい時間帯などにはかなり有効だと思います。
激しい運動は逆効果
ただし、運動も負荷が強すぎると逆効果になります。
実際にサイクリングマシーンで走りながら仕事をしたグループでは、他のグループと比較して、仕事の満足度とパフォーマンスが低下する傾向がありました。
運動が脳みそを覚醒させると言っても、やりすぎると仕事がそっちのけになってしまうのです。当たり前ですが。
散歩するくらいがちょうどいいということです。アップルを作ったスティーブ・ジョブズもよく散歩をしながら、重役とあれこれ話し合っていました。
普段は運動しない人にも効果的
もう一つ嬉しいことに、個人のBMIや運動習慣は実験の関係に影響を与えませんでした。
つまり、太っている人でも普段運動していない人でも、歩くことで十分に心理的なメリットを得られるということです。
仕事の合間にはできる歩く!
とはいえ、トレッドミルは高いですし、サイズなどの問題もあり、一般的に考えて気軽にオフィスに配置できるものでもありません。
なので、この研究の教訓としましては、「仕事中や仕事の合間には、できるだけ軽い運動を定期的に行って、体と脳みそに元気を与えてあげると良い!」ということになります。
仕事でストレスを感じたり作業に飽きたら散歩する!くらいに考えておくといいでしょう。
参考論文
Sliter M, Yuan Z. Workout at work: laboratory test of psychological and performance outcomes of active workstations. J Occup Health Psychol. 2015 Apr;20(2):259-71. doi: 10.1037/a0038175. Epub 2014 Oct 27. PMID: 25347682.