個人の心理的状況、内的要因と恋愛感情
人が恋に落ちるときには、魅力的な相手に出会ったこと以外に、自分がそのとき置かれている状況も大いに影響します。
つまり、ある人と遭遇したときに自分がどのような心理状態(psychological situation)であったのか?ということが、相手に対する好意のレベルを左右してしまうのです。
よく言われているのが、傷ついていたり弱っているときです。病気などにかかり弱っているときは人の優しさが普段よりも温かく感じます。
これにより、元気なときなら何の恋愛感情も覚えなかった相手に対しても、私たちは恋をします。
恋愛に影響を与える自尊心の心理
このように心身ともに弱っているときに恋に落ちやすくなるのは、自尊心の一時的な状態が、他人が与えてくれる愛情の受容のレベルに影響を与えるからです。
たとえば、自尊心が低い人たちは、一時的に自尊心が高くなっていた人たちよりも、自分を優しく受け入れてくれる相手のことをより好きになります。
つまり、自尊心の低い人たちは、自分のことを好きだと言ってくれる人のことを好きになりやすいのです。
自信が落ちているときは恋に落ちやすい
ミネソタ大学のエレイン・ウォルスター博士が1965年に行った古典的な実験では、女子学生を被験者とした実験では、自尊心のレベルが他者の魅力を決めることを実証されています。
この実験でウォルスター博士は、最初に性格の検査をすると伝えて学生たちを一人ずつ集め、終わった後でそれぞれに検査の結果を伝えました。
このとき、半分の女子学生には「あなたの性格はあまり望ましいものではなかった」と告げ(低自尊心グループ)、もう半分の女子学生には「あなたの性格は望ましいものだった」と告げ(高自尊心のグループ)、グループを2つに分けました。
この検査の後、実験助手としてそばにいた仕掛人の男子学生がこっそりと実験参加者らをデートに誘いました。
そして、すべての実験終了後に、デートに誘ってくれた男子学生に対する印象を彼女たちに聞いたところ、低い自尊心グループになった女子学生たちは、高い自尊心グループの女子学生たちに比べて、その男子学生を好意的に評価したのです。
片思いの人の失敗をフォローしてあげる(恋愛アドバイス)
この実験結果は、自信を失っているときに好意を寄せてくれた相手に対して、強い魅力を感じることを示しています。
なので、相手が悩んだり落ち込んだりしていて気持ちが不安定なときには、こちらからアプローチをかけるチャンスになります。
このとき片思いの相手に優しくしたり相談に乗ったりして精神的に支えてあげることで、相手から見たときの自分の魅力を高めることができるのです。
失恋の後にはダメ恋をしやすい
しかし、この心理を逆に言うと、落ち込んでいるときはあまり良くない相手の誘いにも乗ってしまいやすい状態にあるということでもあります。
実験では、落ち込むことを言われただけですが、たとえば失恋したばかりだったり好きな人に浮気されたり騙されたときには、自分の価値をより過小評価してしまっているので注意が必要です。
とはいえ、気持ち的には本当に惹かれてしまっているのでコントロールをするのは難しいかもしれませんが、一応このことは覚えておきましょう。
参考論文
Walster, E. (1965). The effect of self-esteem on romantic liking. Journal of Experimental Social Psychology, 1(2), 184–197.