くるちょろ心理学研究所

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【セルフコンパッション】間違ったセルフコンパッション、間違った思いやりとは?

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「思いやり」と「かわいそう」の違い

 

前回は「心理学的に正しい思いやり方法」について解説してきましたが、今回は「間違ったセルフコンパッション」について解説していきます。

 

セルフコンパッションは日本語では「自己同情」と言いますが、これは自分のことをかわいそうだと思う「自己憐憫」とは違います。

 

日本語の同情には、「相手をかわいそうに思う」という意味も含まれているので、少し違和感があるかもしれません。

 

「同情するなら金をくれ」という名言があるように、私たちは同情という言葉にはネガティブなイメージを抱くことの方が多いですよね。

 

なので、コンパッションの意味を理解するときには、一番多く訳されている「思いやり」や「親切」「親身」「配慮」「寄り添う」といった言葉の方が、日本語の感覚としては近いでしょう。

 

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自己憐憫を感じると自己中になる

 

自分のことをかわいそうだと思う自己憐憫を感じると、私たちは自分の問題で頭がいっぱいになり、他の人が自分と同じような問題や苦悩を抱えていることをつい忘れてしまいます。 

 

このために自己憐憫を感じている人は、他者とのつながりや共通点を無視して、世界で自分一人だけがつらい目に遭って苦しんでいると感じてしまうようになるのです。

 

このような状態が自身のメンタルヘルスに良くないのは、心理学に詳しくない人でも直感的に理解できるでしょう。ある意味、自己中な状態ですからね。

 

自己憐憫を感じると孤独になる

 

想像してみればわかりますが、そのような思い込みをしている人とはなるべく距離を置いて、付き合いたくないと無意識に思ってしまいますよね。

 

自己憐憫は、「他人から切り離された」という自己中心的な感情を増強し、個人的な苦しみの範囲や影響力を誇張する傾向があります。

 

一方で、自分を思いやるセルフコンパッションは、このような孤立感や断絶感を感じることなく、自分と他者の関連する経験や感情を受け入れることができます。

 

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自己憐憫を感じると視野が狭くなりネガティブになる

 

また、自己憐憫の気持ちが強い人は、自分の中でつくりあげた感傷的なドラマに夢中になってしまうことが多くなります。

 

いわゆる思い込みです。ネガティブな思い込みが激しい状態という感じですね。これもメンタルヘルスに悪いです。

 

悲劇のヒロインを演じるという言葉がありますが、映画などで「ああ、私はなんてかわいそうなのかしら」と自分のつらい境遇をアピールしている登場人物が出てくることがありますが、そんな感じです。

 

自分のことをかわいそうだと思っていると、いまの状況から一歩引いて、よりバランスのとれている客観的な視点を持つことができなくなってしまうのです。

 

視野が狭くなってしまうのですね。視野が狭くなると、さらに嫌なことばかりが目に付くようになり、負の連鎖が始まります。

 

思いやりは心の余裕を生む

 

一方で、自分に対して思いやりのある客観的視点(他の人から見た時の視点)を持つことで、「心の余裕」が生まれ、個人的な経験の裏にある人間的な背景をより広い部分を認識し、物事をより大きな視点でとらえることができます。

 

この人間的な背景が、他の人たちと共有・共感できる部分です。

 

この部分に気づくことで、ネガティブな出来事が起きたりネガティブな感情が出てきても、「こういうことは誰にでもあるよね」「よくあることだよね」というふうに考えることができて悲しみに没頭することがなくなります。

 

また、「今、私が経験していることは確かに大変なことだけど、もっと大きな苦しみを経験している人は他にもたくさんいる。これはそんなに怒るほどのことではないのかもしれない」と考えることができるようになり、感情をコントロールしやすくなります。

 

このあたりのコントロールには、認知行動療法も使えるでしょう。

 

次回は「セルフコンパッションと甘え・わがままの違い」について解説していきます。

 

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参考論文、資料

 

Neff K.D., Dahm K.A. (2015) Self-Compassion: What It Is, What It Does, and How It Relates to Mindfulness. In: Ostafin B., Robinson M., Meier B. (eds) Handbook of Mindfulness and Self-Regulation. Springer, New York, NY. 

https://doi.org/10.1007/978-1-4939-2263-5_10

Kristin D. Neff, Tiffany A. Whittaker & Anke Karl (2017) Examining the Factor Structure of the Self-Compassion Scale in Four Distinct Populations: Is the Use of a Total Scale Score Justified?, Journal of Personality Assessment, 99:6, 596-607, DOI: 10.1080/00223891.2016.1269334

https://doi.org/10.1080/00223891.2016.1269334

Neff KD, Germer CK. A pilot study and randomized controlled trial of the mindful self-compassion program. J Clin Psychol. 2013 Jan;69(1):28-44. doi: 10.1002/jclp.21923. Epub 2012 Oct 15. PMID: 23070875.

https://doi.org/10.1002/jclp.21923

KRISTIN D. NEFF (2003) The Development and Validation of a Scale to Measure Self-Compassion, Self and Identity, 2:3, 223-250, DOI: 10.1080/15298860309027

https://doi.org/10.1080/15298860309027

セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる 単行本 – 2014/11/26

クリスティーン・ネフ (著), 石村 郁夫 (翻訳), 樫村 正美 (翻訳)

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