本番の説得より大事な事前説得の技術
今回は交渉事に使える心理テクニックのひとつ、プリスエージョン(事前説得術)の意味と使い方について解説していきます。
社会心理学者のロバート・チャルディーニ博士は、研究調査のために様々な営業現場に潜入したとき、あることに気づきました。
あらゆる業界でエースと評される人たちが多くの時間をかけていたのは、話のわかりやすさや論理的な説明といった相手を説得する技術ではなく、説得の前に何をして、何を言うかという事前の準備だったのです。
プリスエージョン(事前説得術)とは?
説得がうまくいくかどうかは下準備次第で、交渉相手が説得のメッセージを聞くから、それを受け入れる気にするのが大切なのです。これをプリシュエージョン(PRE-SUASION)、事前説得術と呼びます。
プリスエージョンの具体例として、チャルディーニ博士はあるコンサルタントの仕事例を挙げています。
コンサルタントである知人は長年の間、見積もりに対してクライアントから10~15%の値引きを要求されることに悩んでいました。しかしだからと言って、値引き分の金額を先に上乗せする気にもなれず、値下げを拒否すれば契約ができずに仕事を失ってしまうかもしれないと悩んでいたのです。
そこで彼は別の解決方法をとることにしたのです。それがプリスエージョンでした。すると、それ以降同じ問題に煩わされることがなくなったのです。
たった一つのジョークで値下げの心配がなくなった
その方法はものすごくシンプルでして、顧客が見積もり(7500ドル)を見る直前に「おわかりでしょうが、このサービスで100万ドルをいただくわけにはまいりません」というジョークを挟んだだけです。
するとたったこれだけで、交渉相手は、こちらが提示する金額に素直に同意してくれ、値下げ交渉をすることがなくなったのです。
これはアンカリングという心理テクニックで、たとえジョークであっても、最初に100万ドルという大きな金額を聞かされると、交渉対手の脳にはそれがアンカー(碇)になって100万ドルが基準値になり、7500ドルという見積もりの金額がお得に感じるようになるのです。別名コントラストの原理(コントラスト効果)とも言います。
【説得、親密の心理術】
好きな人と一緒にご飯を食べることで、お互いの親密度が増します。
相手と仲良くなる心理術で有名なこのランチョンテクニックですが、実は説得術としても使えます。
人は何かを食べているときほど説得されやすいという心理を持っているため、食事時のお願いに弱いのです。
— 心理学解説bot (@kruchoro) December 2, 2018
相手を不快にさせずに仲良くなれる心理テクニック
たったこれだけのことで交渉相手は、値下げの交渉をする気をなくしてしまうのです。しかもこの方法は相手の気持ちを不快にさせることがなく、むしろお互いの心理的な距離を縮められることのが大きな特徴です。
というわけで、もしよかったらあなたも交渉ごとの際には交渉内容に関連したジョークを言ってみてください。もしかするとそれだけで、仕事が今よりもずっとはかどるようになるかもしれませんからね。