- 外国語習得は10歳が限界!?
- 高校生になると言語脳の成長率が大きく下がる
- 大人になってからではネイティブスピーカーにはなれない
- それでも外国語習得は誰でも可能
- ネイティブに近い状態にはなれる!
- 歳を取ると言語の習得が早くなる
- ネイティブライクを目指そう
- 参考論文
英語はいつ学び始めるのが良いのか?
外国話者を調べた海外の研究によると、外国語をネイティブのようにスムーズに話せるようになるには、10歳までにその語学を学んでおく必要があることがわかっています。
人間の脳みそは10代の頃にはどんな語学であっても環境さえあれば習得できるようになっています。赤ちゃんや子どもが言葉を覚えるのが早いのはこのためです。
しかし、これは子どもが成長するために特化した能力なので、高校生を超えたあたりから急に衰え始めてしまうのです。
その影響で、ネイティブスピーカーのように言葉を自由自在に操れるようになれる言語の学習年齢に制限がついてしまうのです。詳しく見ていきましょう。
#英語 を話す約70万人の人たちを調査したところ、ネイティブのようにペラペラに話せるようになるには10歳までに英語教育を始めていなければいけないことがわかりました‼️😱ガーン
人間の言語習得能力は #高校生 (17歳)くらいから下がり始めるので、細かな文法のルールなどが身につかなくなります❌🙅♀️
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年4月30日
外国語習得は10歳が限界!?
アメリカ、マサチューセッツ工科大学のジョシュ ハーツホーン博士とハーバード大学のスティーブン ピンカー博士が、2018年の研究で英語を話す約70万人の人たちを調査したところ、「ネイティブのようにペラペラに話せるようになるには10歳までに英語教育を始めていなければいけない」ことがわかったのです。
外国語を学んでいる人には何ともショッキングな研究結果が出てしまいました。誰だって言語を学ぶ以上はネイティブと同じレベルを目指していきたいですものね。心中お察しします。具体的に研究内容を見ていきましょう。
この研究の調査対象のうち、約25万人は英語のネイティブスピーカーで、それ以外は外国語として英語を話す人達でした。 年齢層は20〜30代がメインで、年齢の範囲は10〜70歳までのあいだに散らばっています。若い人でも年老いた人でも同じようにネイティブスピーカーには勝てなかったのです。
このように私たちが大人になってしまうとネイティブのように話せなくなるのは、最初に述べたとおり脳みその発達の仕方に理由があります。
高校生になると言語脳の成長率が大きく下がる
言語能力の発達の違いを発見した研究者によると、人間の言語習得能力は高校生 (17歳)くらいから下がり始めるので、この歳を超えてから言語を学んでも細かな文法のルールなどが身につかなくなるのです。
いくら頭で文法や言葉のルールを理解していても、使っているうちに間違ってしまうことが多くなってしまうのです。
言語の細かいところは、経験や知識といった知性の部分ではカバーしきれないのですね。ここまで来ると、遺伝子の影響が大きくなってしまうのです。
大人になってからではネイティブスピーカーにはなれない
研究者は、10歳以前の子供の頃から英語を話すネイティブスピーカーには、それ以後英語学習を始めた人たちが勝てる見込みはないとすら断言しています。これが現実なのでしょうが、かなり厳しいお言葉ですね。
もちろん、テストや能力の内容にもよりますが、基本的にはネイティブスピーカーには言語テストで勝てなくなるそうです。
まぁ大人になってからテストの結果なんてそうそう気になったりはしませんが、事実としてはそうなってしまうようです。
それでも外国語習得は誰でも可能
研究が示すように、私たちは出生時から10歳までのあいだは言語の吸収能力が異常に高いのですが、この頃から脳の仕組みが変わってきて、成長ピークになるのは17、18歳となり、その後は減少し続けます。
このような遺伝子の影響はどうにもできないので、遺伝子に関する研究結果は切なくなりがちですね。
とはいえ、ネイティブにはなれなくても、ネイティブのように話せるようにはなれます。何が違うのかというと、細かいことを気にしなければいいのです。何とも適当なアドバイスですが笑。
ネイティブに近い状態にはなれる!
この「ネイティブではないけれどネイティブに近い状態」はネイティブライクと呼ばれており、研究でも確認されています。
ネイティブとは違うのですが、周りから見たらほとんどネイティブと変わらないような状態です。大人になってから英語を習得した人でペラペラになっている人がいますが、あんな感じです。
ネイティブライクでは、例えば「三単現のs」のような細かな文法ルールは間違えてしまうことは多いのですが、これを間違えたところで日常生活にはまったく困りません。というよりもネイティブでも間違えたりします。
これは日本語でイメージしてもらえれば理解しやすいかと思います。話している途中で、少し変な話し方をしてしまったり変な言葉遣いになってしまっても、笑いにして多少ツッコむことはありますが、会話は何不自由なく進みますよね。
なので、語学をきちんと学習すれば、ネイティブにはなれなくても、ほとんど現地の人と変わらないレベルのスキル習得は誰でも可能です。
歳を取ると言語の習得が早くなる
また、言語の習得は激しい運動競技とは違って年齢がいくつになっても可能です。ある意味で限界のない分野なわけです。
さらに研究によると、むしろ歳を取って成熟したあとの方が外国語の習得スピードは早まる!ということもわかっています。
つまり、大人になると若い時よりも少ない時間量で言語が習得できるようになるのです。
スウェーデン、ストックホルムのバイリンガリズム研究センターのニクラス・アブラハムソン、ケネス・ヒルテンスタム博士らが2009年に195人を対象に行った研究では、若者と中高年者とで外国語のレベルを比べてみたところ、歳を取った人の方が短期的にも長期的にも第二言語力が発達しやすいという結果が出ています。
確かにネイティブスピーカーになるためには若者の時からの言語習得環境が必要なのですが、その代わりに歳を取ることで外国語の習得スピードが早まるのです。人間には面白い機能が備わっているものですね。
若さとは資産であり武器である。若さを振りかざせる人は強いのだ。そしてその若さを一番に活用できる時期は誰にとっても今まさにこの瞬間である。この瞬間より若い時間はこの先手に入らない。10年後の自分よりも今の自分は10歳も若いのだ。いくつになろうと構わずに常にこの瞬間の若さを楽しもう。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2019年7月13日
ネイティブライクを目指そう
大人になってからはネイティブにはなれませんが、ネイティブライクになる環境が整って言語の習得スピードも早まるので、個人的には歳を取ることは全然悪くないなという感じですね。
それに言語のレベルがネイティブライクであれば何不自由なく外国語環境で過ごせますから、何もネイティブにこだわって外国語学習をあきらめる必要もないかと思います。変にこだわって深く考えすぎると、「ネイティブとは何なのか」と哲学的な思考をしてしまいそうですしね。先ほども言った通り、誰だって言葉の間違いくらいはするので。
同じように、ネイティブにこだわって子どものうちから外国語を丹念に学ぶ必要もないかと思います。本人が好きなら別ですが、これからは自動翻訳もあるので外国語にこだわる必要はあまりないと思います。
というわけで、歳を取っていたとしても外国語に興味のある人は、ネイティブライクに順応した今の脳みそを使ってより多くの外国語を効率的に学んでいきましょう。
ネイティブとして言語を話せるようになるためには10歳までに学習しないとダメ歳を取ってもネイティブライクにはなれる歳を取ると外国語の習得スピードが早まる
参考論文
Abrahamsson, N. and Hyltenstam, K. (2009), Age of Onset and Nativelikeness in a Second Language: Listener Perception Versus Linguistic Scrutiny. Language Learning, 59: 249-306.