小さなことは忘れる
アメリカ、ニューヨーク大学マーケティング学科のモーウィッツ教授は、「商品の価格をすべての費用込みの状態で表示した場合」と、「各費用と商品を別々に分割表示した場合」によって、買い物客の心理にどのような変化が見られるのかを調査しました。
この実験では、前述した「費用がすべて込みの値段表示のカタログ」と、「費用と商品とを分けた値段表示のカタログ」の2種類を用意し、被験者たちにそれぞれのカタログで買い物をしてもらいました。
すると、分割価格で表示したカタログで買い物をした被験者は、本来かかった値段よりも低い値段を見積もる傾向があることを発見しました。
分割表示のカタログで買い物をした場合、正確に思い出せる費用が商品の本体価格だけになってしまったのですね。
表示の仕方で情報の重要度が変わる
具体的には、商品自体の価格が69.95ドルで輸送費などの経費が12.95ドル、それらを足すと全部で82.90ドルかかる商品をサンプルとして実験しました。そしてその後で、いくらの買い物をしたのかを思い出させてみたのですね。
すると、商品価格と輸送費が別に表示されたカタログで買い物をした被験者は、商品価格のみの値段に記憶が引っ張られて、平均78.27ドルと値段を低く見積もってしまいました。本来の費用から5ドル近く外れて記憶されてしまっていますね。
しかし、一方で、すべての費用込みの値段表示を見て買い物をした人たちは、ほとんど正しい値段を思い出すことができました。
これは、彼らにとって重要な情報は、すべての費用込みの値段だったので記憶しやすかったのです。
それに対して分割価格の表示で買い物をした人たちが重要視したのは、商品の本体価格だけでした。
ここに両者の違いが見られたのです。輸送費などの諸経費は小さなことだと自動的に認識されてしまったのですね。
人は一部の重要な情報しか記憶できない
たとえばネットショッピングの場合で考えてみると、「これ、いくらしたの?」と友人に聞かれても、商品本体の値段だけを見て答え、配達費用のことは考慮に入れないことがありますよね。
このような心理現象は、分割された情報によって印象が変えられてしまうために起こるのです。
というわけで、私たちは一番重要なことしか記憶できないうえに、どんな情報が重要かどうかは情報の提示の仕方に影響される心理があるのです。
情報が分割されて提示されたときには注意しましょう。もしかすると、そこにはあなたにとって大事な情報が隠されているかもしれません。
私たちは一番重要なことしか記憶していない
買い物の計算も端数や雑費を切って、適当に計算している