中年に危機はない?
「中年の危機」という言葉があります。これはだいたい、30代の後半から40代前半にかけて価値観の転換や欲求の変化が起きたり立場の変化によって、中年期特有の心理的危機、または鬱病や不安障害が起こりやすいという現象です。
これは日本だけではなく海外でも言われていて、ミッドライフ・クライシス(Midlife crisis)、ミドルエイジ・クライシス(Middle age crisis)と言われています。
しかし、過去に行われたいくつかの研究の結果によると、この「中年の危機」という現象は科学的には確認されず、誤りであることが明らかになっています。
中年の危機を感じるのは一部
例えば、2000年に行われたコーネル大学人間開発学部のエレイン・ウェシントン博士の調査によれば、実際に中年期に危機を経験した人は全体の10〜26%にすぎなかったことがわかっています。多くても四分の一なので、結構少ないですね。
この調査の対象は724人(28〜78歳)の男女で、中年期前半は男性のほうが中年の危機を多く感じる傾向があり、年を取るにつれて女性のほうが増えていくという傾向があったのですが、全体的な数字は後半になるにつれて下がり続けたとのことで、あまり心配する必要はないです。
中年はむしろ人生の全盛期
また、2004年のブランダイス大学心理学部のマーギー・E・ラックマンの研究によると、人の中年期は心理的な機能がピークを迎える時期であることがわかっています。年を取ればとるほど経験値が増えてメンタルが強くなっていくのですね。
さらに、1995年に行われたハリー・R・クラーク博士の調査によると、中年の危機における典型的な状況の1つに数えられる離婚は、実際には中年期よりも前に起こりやすいことが判明しています。若年層の離婚のほうが多いのですね。
これも中年期のメンタルの強さが関係していそうですね。もう今更悩むことはないという感じで夫婦のストレスもうまく対処しているのでしょう。
人は年を取るほど幸せになる
また、アメリカ以外の他の文化圏においても、特に中年期がストレスが多くて困難な時期であるとの証拠はないという結果になっていまして、中年の危機はまったくの嘘だったことがわかっています。
むしろ人は年をとればとるほど幸せになっていく!というのが最近の心理学の見解です。
年をとればとるほどメンタルが成長するというのは希望が持てる話ですよね!
他の様々な研究結果を見ても、人生の後半にかけて幸福度が上がっていく!という話が多いので、年を取ることもまんざら悪いことではないのです。
とは言っても、やはり健康の維持は大事です。年を取れば筋肉が衰えやすくなったり病気やけがのリスクが上がるのもまた事実ですから、できれば人生のなるべく早いときに健康習慣は見つけておくことをおすすめします。
参考論文
Expecting stress: Americans and the “midlife crisis
https://psycnet.apa.org/doi/10.1023/A:1005611230993
Development in midlife
https://doi.org/10.1146/annurev.psych.55.090902.141521
POPULATION GROWTH AND THE BENEFITS FROM OPTIMALLY PRICED EXTERNALITIES