くるちょろ心理学研究所

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【拍手喝采をつくる!】観客の拍手が大きくなっていくメカニズムと理由を心理学的に解説

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拍手喝采の心理学

 

「劇場で拍手喝采!」こう聞くと、とても素敵なパフォーマンスや作品が鑑賞できたのだと私たちは思います。

 

これは良いパフォーマンスを見たときに、感動して拍手を送る習慣があるからです。

 

しかし、この心理は本当でしょうか?つまり、人が拍手をするのは本当に素晴らしいものを見たときなのでしょうか?

 

実は「パフォーマンスの質は観客の拍手の量を左右しない」ということが、すでに研究によって示唆されています。

 

ショッキングな話ですね。パフォーマンスが良くても悪くても拍手とは関係ないのです。

 

では、いったい何が拍手喝采の状況をつくるのでしょう?

 

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他の人につられて拍手しているだけだった

 

2013年におこなわれたウプサラ大学(スウェーデン)数学部のリチャード・P・マン、ストックホルム未来学研究所のデビッド・J・T・サンプター 、リーズ大学(イギリス)統合比較生物学研究所のジョリオン・ファリア、ライプニッツ淡水生態学および内陸水産研究所(ドイツ)のイェンス・クラウス博士らの研究によると、パフォーマンスの質に関係なく、拍手には伝染性があり、人が拍手する時間の長さは他の観客の行動に影響されることが判明しています。

 

拍手がその集団に広がるには、まず最初に数人が拍手をし始めればよく、また拍手を止めるためには1人か2人が止めればよいのです。

 

マン博士は、「同じ演奏の質であっても、拍手の長さが全く異なることがある。これは、純粋に群衆のなかに宿る力学からきているからだ」と述べています。

 

拍手を起こすために必要な連鎖反応の条件とは?

 

この研究では、合計107人の学生を対象に、それぞれ13〜20人のグループに分けたあとで彼らにプレゼンテーションを見てもらい、どのように拍手が起こるのかを調べました。

 

そして分析の結果、たった一人か二人が手を合わせるだけで、拍手の波紋がグループ内に広がっていくことがわかりました。

 

たった一人か二人、拍手をする人がいるだけで会場が拍手に包まれたのです。こんなに人数が少なくても十分なのは驚きですね。

 

しかし、たしかに想像してみれば、そばにいる人が拍手を始めたら自分も自然と拍手をしてしまいますよね。

 

私たちは自分で思っている以上に他人の行動につられてしまうようです。

 

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重要なのは拍手の音の大きさ

 

拍手喝采の状態をつくるには、連鎖反応を引き起こすだけで十分です。そしてそのためには、誰かがまず最初に拍手をすればいいのです。

 

すると最初の拍手が連鎖反応を引き起こし、その音に刺激されて他の聴衆も一緒になって拍手をするようになります。

 

また面白いことに、「自分も拍手をしなくて!」と感じる社会的プレッシャーは、隣に座っている人が拍手をしているかどうかよりも、その会場内にいる人たちの拍手の音の大きさからきていました。

 

つまり、私たちは拍手をしている人を見て拍手をするのではなく、「拍手している音」を聞いて拍手をしているのです。驚きの結果ですね。

 

パフォーマンスの質は関係ない

 

さらに驚くべきことに、どんなに素晴らしいパフォーマンスを見たとしても、拍手の持続時間にはほとんど影響がなかったこともわかりました。

 

実験では拍手の持続時間には大きなばらつきがあり、あるケースでは観客は一人当たり平均10回拍手し、またあるときは3回拍手していました。

 

しかし、どの場面でも共通しているのは、一度拍手をし始めたら、誰かが止めるように仕向けるまで、誰も拍手を止めないということです。社会的圧力の影響が強いのです。

 

そう考えると、テレビや劇場などでは昔からサクラが拍手をしたり笑いを足したりといった手法で人気を獲得していましたが、実際にこの手法はかなり効果的だったのですね。

 

 

流行も拍手のように起きて終わる?

 

研究者らは、拍手の社会的伝染が、世間の流行りやトレンド、支持されるものなどを理解することにも役立つだろうと述べています。

 

民衆の暴動や観客のフーリガン化が起こるメカニズムの理解と防止にも役立ちそうですね。

 

もしかしたら、その時代の流行りも拍手の現象と同じように、たった数人の人から始まってたった数人の人が関心を失ったことで終わっているのかもしれません。

 

また、最近では友人や好きなインフルエンサーの口コミ効果が大きいと言われていますが、この実験内容が示すように、実際は見知らぬ人たちが関心を持っているというだけで私たちはそれが気になるようになってしまうのかもしれませんね。

 

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参考論文

 

Mann RP, Faria J, Sumpter DJ, Krause J. The dynamics of audience applause. J R Soc Interface. 2013 Jun 19;10(85):20130466. doi: 10.1098/rsif.2013.0466. PMID: 23782537; PMCID: PMC4043176.

https://doi.org/10.1098/rsif.2013.0466