赤ちゃんが安全に産めないアメリカ
意外かもしれませんが、アメリカは、妊産婦の死亡率が一向に下がらないという問題を抱えています。数字にして、出生数10万人当たり約14人の母親が命を落としています。
ちなみに、アメリカと比べると日本の妊産婦死亡率は出生数10万人当たり約3人で、4分の1です。日本は世界一安全に赤ちゃんが産める国なのです。
さらに、世界保健機関(WHO)によれば、1990~2015年の間に妊産婦の死亡率が悪化したのは、46の先進国の中でセルビアとアメリカだけだったと報告されています。とにかくアメリカの妊産婦の安全性が問題視されているようです。
どうしてこのような状態になっているのかというと、その一つの大きな原因が人種差別です。
黒人の死亡率は白人の3倍
アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、アフリカ系米国人女性が妊娠に関連する原因で死亡する確率は白人女性の約3倍にもなっています。また、その60%以上は回避が可能なものだという試算まで出ています。
どうしてアフリカ系米国人女性の妊産婦死亡率だけがこんなにも高いのかというと、その理由は、少数派の人種が受けている日々のストレスによるものだという指摘があります。
マイノリティーを襲う風化作用
研究者たちによれば、アフリカ系、中南米系、先住民といったマイノリティーに属する人々は、経済的または社会的に成功していたとしても、日ごろから激しいストレスを経験しており、それが彼女たちの身体的な健康を損なっているとのことです。
どれだけ成功していても健康を損なってしまうのは辛いですね。ミシガン大学で公衆衛生学の教授を務めるアーリーン・ジェロニマスは、この心理的影響のことを「風化作用」と呼んでいます。
人種差別や偏見に長年さらされることによって、アフリカ系米国人は白人よりも早く健康を害してしまうのです。
医療従事者の中にある隠れた偏見
また、医療関係者の潜在意識にある偏見が黒人の妊産婦へのケアに影響している可能性もあるとのことで、とにかく少数派の人が社会で健康的に生きていくのは難しいようです。
本人に差別する気がなくても無意識に差別的な意識は働いてしまうので、なかなか解決するのが難しい問題ですね。