自分と似ている人からの意見は聞き入れやすい心理
私たちは自分と同じ思考や感覚を持つ人たちの意見ほどより簡単に受け入れてしまうという心理を持っています。自分と似たタイプの人からの説得やアドバイスには耳を傾けやすいのです。
これはリーダーや経営者といった人に指示を出したり方向性を決めて組織をまとめるといった集団行動の決定権を持った立場にある人も同じです。
つまり、多様な意見や反対意見というのはそもそも聞き入れてもらいにくい心理があるのです。組織が間違った方向にいつまでも進み続けてしまうのはこの心理があるためです。
部下は上司の喜ぶ意見しか言わなくなる心理がある
さらにはリーダーに付き従う立場にある人たちはこの心理のことを経験上よく理解しているので、権力を持っている人たちが喜ぶ内容の話や賛成意見しか言わなくなってしまうという集団心理すらも働きます。
こうして多様性はさらに失われ、極端な意見に偏るようになっていきます。
また、相手に合わせることができる人ほど上司や経営者に気に入られやすいという事実も存在します。なのでなおのこと、従業員は経営幹部の顔色をうかがうようになります。
そして、上司が自分に合わせてくれる部下に高い評価を与えるのは、同じ意見を持っている彼らが正しい意見を言っていると思い込んでしまう心理があるからということがわかっています。
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上司は自分と同じ意見を採用する
アメリカ、ニューヨーク州立大学で組織学を教えているレイモンド ハント博士は、210名の経営者を対象に従業員や部下からの意見や提言が採用されやすくなる心理的な条件について調査をしました。
まず調査対象となった経営者の人たちを直感的に判断するタイプか、分析的に判断するタイプかに分け、それぞれに直感的なアドバイスと分析的なアドバイスを提示してみました。
すると、直感的な判断をする経営者は直感的なアドバイスを受け入れやすく、分析的な判断をする経営者は分析的なアドバイスを受け入れやすいという結果が出たのです。
つまり、リーダーは自分と同じ意見や考え方を持つ部下のアドバイスの方が、そうではない部下と比べて聞き入れやすいということです。
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出世するためには部下は上司に合わせなければいけない
逆に言うと、上司とぶつかるような意見は反感を買ってしまうので提言しても良いことはありませんし、下手をすると評価が下がることにも繋がります。
身も蓋もない話なのですが、会社内で成功を収めるためには上司の意見や価値観と自分の働き方を統一させなければいけないのです。意見や価値観が上の立場の人と食い違うと評価を得られないだけではなく協力もしてもらえない可能性もあります。
例えば、組織の変革を行ったり方向性を大きく変えるのであれば、上司の考えに合わせた上で自分の主張を少しずつ従来の慣習に織り交ぜていく必要があります。
最初から上司の意向とは違う意見を伝えても無視されてしまう可能性が高いので注意しましょう。
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上司や経営幹部をうまく説得する方法
今回の研究はちょっと切ない内容でしたが何はともあれ、まずは自分の上司のタイプを見極めるところから行動を始めていきましょう。
説得する相手の情報は持っていても損はありませんからね。相手を知り、自分を知るところからコミュニケーションスキルは高まっていくのです。
そうして相手との心理的な距離を詰めてから、多様な意見を取り入れてもらうように行動を起こしていくと新しい意見であっても受け入れてもらいやすくなります。
上司や経営者と言っても心理で動く人間ですので、心理テクニックは有効です。正攻法でうまく行かない場合は工夫をして相手の説得にあたりましょう。
・簡単なあることをするだけで、相手が優しくなってお願い事がずっと叶いやすくなる