くるちょろ心理学研究所

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【直感の心理学】最初の直感や第一印象が正しくなるとき

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第一感の誤謬(最初の直感の誤り)とは?

 

今回は直感の心理学の続きです。

 

前回は最初の直感を信じようとする心理について解説しましたが、今回は「最初の直感の不正確さ」と「直感が正しいとき」について解説していきます。

 

間違った最初の直感を正しいと思い、その気持ちに従ってしまうことを、「第一感の誤謬(first-instinct fallacy)」と言います。

 

この心理は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の心理学者であるジャスティン・クルーガー博士らが2005年に行った実験の結果から見つかりました。

 

この研究では、最初に浮かんだテストの答えをあとから修正した学生は、答えを修正しなかった学生よりも平均して良いスコアを得ることができていました。

 

第一感の誤謬の発見は、最初に浮かんだ回答が修正された2番目の回答よりも悪い選択であるということを示しています。

 

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直感を信じないと良くないことが起こると信じる心理

 

さらに、それだけでなく、学生たちはその事実とは反対のこと、つまり、「最初の直感が正しく、答えを書き直すほうが間違うことが多い」と信じていたこともわかっています。

 

もちろん、これは学生だけに限った話ではなく、私たち人間すべてに言える心理現象です。私たちは正答率の低い最初の直感を信じてしまいやすいのです。

 

もしも回答に悩んだ時には答えを変える法が正しいのですね。テストを控えている学生の人たちはよく覚えておきましょう。

 

直感を信じてしまうのはあとで後悔したくないから

 

クルーガー博士は、この第一感の誤謬の心理が起こるもうひとつの理由として、「変更した回答で間違ってしまうと私たちはより強く後悔してしまうからだ」と述べています。

 

答えを正しいものから不正解に変えてしまった場合に、私たちの中ではその記憶が印象的で強く残り、これが「もしも答えを変えなかった…」という悔しい自己批判につながってしまうのです。

 

一方で、不正解の回答から正解の回答へ変更した場合には記憶に残りにくく、時間の経過とともに薄れていく可能性が高くなります。

 

そのために「第一感の誤謬は起こる頻度が低い!」と私たちは錯覚してしまうのです。ある意味で記憶を捏造してしまっているのです。

 

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記憶の改ざんが起こる心理的理由

 

これは、前者の後悔は、正解から不正解に切り替えたというコミットした行動を嘆くものであるのに対し、後者の後悔は、不正解から正解に切り替えなかったという不作為を嘆くものだからです。

 

行動は不作為よりも大きな意味を持ちます。「気持ちを切り替えていれば」と言うよりも、「気持ちを切り替えていなければ」と自分に言い聞かせるほうが苦しいものです。前者の方が罪悪感が強くなるのです。

 

また、ネガティブなことのほうが記憶に残りやすいという心理も関係しています。

 

私たちはリスクを避けるために、ポジティブなことよりもネガティブなことをよく記憶する習慣があるので、選択を変えて失敗した記憶のほうがどうしても強く残ってしまうのです。

 

これを非対称性反事実的思考(Asymmetrical counterfactual thinking)と言います。情報の重みづけが偏っている(非対称)ために事実とは異なることを信じたり思考してしまうことを指します。

 

こうした問題を解決するのは難しいのですが、まずは自分が第一感の誤謬に陥っていないか、直感が正しいと信じ込もうとしていないか、といったことに意識して気づくことが必要です。

 

 

最初の直感が正しいときはどんな状況?

 

ここまで第一感の誤謬について解説しましたが、しかしだからと言って、すべての第一感が間違っているわけではありません。

 

テストで最初に書いた回答をすべて書き換えていたら、むしろ成績が悪くなってしまうことは目に見えているでしょう。

 

私たちが最初の答えを変えていいのは、最初の回答に確信が持てず、再考した時により高い自信と確信度で新しい答えのほうが正しいと感じられるときだけです。

 

つまり、「書き直した答えのほうが正しいような気がする」と感じたときには第一感の誤謬が起きている可能性が高いので、答えを変えたほうがうまくいきやすいということです。

 

これは話を聞くと当たり前のような気がしますが、先ほども解説したとおり、私たちには第一感の誤謬の心理があるので、そのような気持ちになっても回答を変えにくいのです。

 

もしも答えに悩む問題にあたったら、どちらの回答のほうがより自信をもって答えられるか?という自分の気持ちに着目してみるのも手ですね。

 

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参考論文

 

Grüning, D. J., & Krueger, J. I. (2021). Strategic thinking: A random walk into the rabbit hole. Collabra: Psychology, 7(1): 24921. 

https://doi.org/10.1525/collabra.24921

Think Again: The Power of Knowing What You Don't Know (English Edition) Kindle版

英語版  Adam Grant  (著) 

https://amzn.to/3B3IEc3

Kruger, J., Wirtz, D., & Miller, D. T. (2005). Counterfactual Thinking and the First Instinct Fallacy. Journal of Personality and Social Psychology, 88(5), 725–735. 

https://doi.org/10.1037/0022-3514.88.5.725

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マルコム・グラッドウェル  (著), 沢田 博 (翻訳), 阿部 尚美 (翻訳)

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