【やる気】行動意欲が高い人はドーパミン量が人より多い

お金の心理学
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ADHD治療薬と認知機能

 

注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療に使われているメチルフェニデート(商品名リタリンで有名)などの脳を覚醒させる薬は、認知機能の向上を目的に使用されています。

 

ときに、こうした興奮剤は、ADHDでなくても、勉強中の集中力を高めるために学生に使用されています。

 

ただ、これらの薬の正確なメカニズムは不明なままです。

 

薬はやる気を高めてくれる

 

そこで、アメリカのブラウン大学、ラドバウド大学でおこなわれた2020年の研究では、こうした治療薬が脳に与える影響について調べられました。

 

すると、メチルフェニデートは認知機能を高めているのではなく、報酬の追求、運動、意欲に関与する化学伝達物質であるドーパミンの再吸収を阻害することで、人々にやる気を引き起こしていることがわかったのです。

 

薬によってドーパミンの再吸収を阻害することで、運動機能と報酬に関与する線条体と呼ばれる脳領域のドーパミンの量が増加し、特定のタスクに対するモチベーションがアップしていたのです。

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ドーパミンが多い人は大きな報酬を選ぶ

 

この研究では、18歳から43歳までの50人を対象に、参加者の線条体のドーパミンの濃度を測定したうえで、難易度の異なる一連の記憶課題のどちらかを選択してもらいました。

 

このとき、より困難な精神的タスクには、より多くの金銭が支払われることになっていました。

 

難しいことをすればそれだけ報酬が多く得られるという課題設定にして、参加者がどちらの課題を選ぶのかを調べたのですね。

 

するとその結果、線条体の尾状核と呼ばれる部位のドーパミンレベルが高い人ほど、利益(お金)により惹きつけられ、より困難な精神的課題を選択する傾向があることがわかったのです。

 

一方で、この部位のドーパミンレベルが低い人は、知覚されたコスト、つまり課題の難易度により敏感に反応する傾向がありました。

 

つまり、ドーパミンのレベルが低い人では、手に入れられる報酬よりも課題の難しさに目が行ってしまい、なるべく簡単な作業を選んでしまう心理が働くのです。

 

ドーパミンを増やすと挑戦するようになる

 

さらに、次の実験では、参加者にドーパミンレベルを上昇させる抗精神病薬(ADHDの治療で使用される薬)を服用してもらいました。

 

すると、薬を使ってドーパミンを増やすと、もともとの尾状核のドーパミンレベルが低い人でも、より難しい精神的課題を選択する意欲が高まったのです。

 

この研究結果からわかる通り、私たちがより高い報酬を得るためにより難しい課題をこなすように行動するかどうかはドーパミンのレベルが大きく関係しているのです。

 

ドーパミンで行動力が増える理由

 

研究者は、ドーパミンは私たちの利益に対する重みづけを増加させる効果があると述べています。

 

ドーパミンレベルが低い人は、ドーパミンを増やすことで、精神的な費用便益分析(やるほうが得か、やらないほうが得か?という考え)に影響を与え、費用よりも報酬を重視するようになります。

 

つまり、手に入れられる報酬がより魅力的に見えるようになり、一方で作業がより簡単そう(あまり辛くなさそう)に見えるようになるのですね。

 

これによってドーパミンのレベルが増加した参加者は、より困難でより多くの報酬を得られる課題を選ぶようになったのです。

 

成功者はドーパミン量が多い?

 

今回の話から、人間の行動力を高めるためには、脳内のドーパミンレベルを上げることが重要だということがわかりました。

 

ということは、起業家の人や著名人はもともとのドーパミンのレベルが高いために、そこまで頑張れているのかもしれません。

 

近い将来、ADHD治療薬がスマートドラッグとして常用される日が来るかもしれませんね。アメリカではすでに使用されていますが。

 

言い方は悪いのですが、「いかに報酬に自分の目をくらませるか」ということも、成功するためには重要なのです。

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参考論文

 

Dopamine promotes cognitive effort by biasing the benefits versus costs of cognitive work. Westbrook A, van den Bosch R, Määttä JI, Hofmans L, Papadopetraki D, Cools R, Frank MJ. Science. 2020 Mar 20;367(6484):1362-1366. doi: 10.1126/science.aaz5891. PMID: 32193325.

https://doi.org/10.1126/science.aaz5891

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