- ダークトライアドはどうやって揉め事に対処している?
- 相手を言いくるめようとする
- ナルシストとサイコパスは譲歩しない
- 決して自分から譲歩はしない
- マキャベリストの交渉方法
- サイコパスの交渉方法
- ナルシストの交渉方法
- 参考論文
対人葛藤とは?
人と人との間で生じる対立や確執のことを対人葛藤と言います。わかりやすく言うと、誰かと揉めている状態という感じですね。
ダークトライアド傾向の高い人は、他者を心理操作するような自己中心的な行動をとるため、この対人葛藤が生じやすいというリスクを抱えています。
つまり、性格のヤバい人は自分勝手な行動ばかりするので、他の人と揉めやすくなっているのです。
ダークトライアドはどうやって揉め事に対処している?
この揉め事が多ければ多いほど、ダークトライアド傾向の高い人は損をすることになります。そうなると損をしないように彼らも悪さをしなくなるので、性格のヤバい人は社会からいなくなるはずです。
しかし、実際には、少数派とはいえ、ダークトライアド傾向の高い人は生き残っているわけです。これは彼らが対人葛藤にうまく対処しているからです。
では、対人葛藤が起こるような状況で、ダークトライアド傾向の高い人はどのように対処しているのでしょうか?
相手を言いくるめようとする
男性77名、女性142名、合計220名の人を対象にした早稲田大学の2017年の研究では、ダークトライアド傾向の高い人たちがどのように対人葛藤時の問題に対処しているのかが調べられました。
例えば、意見が合わなかったり利益が対立するなど、人間関係で交渉が必要な揉め事が起きたときに性格のヤバい人たちはどうやって解決しているのかを調べたのですね。
すると、サイコパシー、ナルシシズム、マキャベリズムといったダークトライアド傾向の高い人は、いずれのタイプの場合でも、強制スタイルと有意な正の相関を示し、このスタイルを採用することが最も高いことがわかりました。
強制スタイルとは、強い態度や威圧的な行動をすることで相手を言いくるめる交渉方法です。極端なことを言うと、脅しですね。
つまり、一般的なイメージ通りの結果ですが、性格のヤバい人はやはりこうした強気な態度で自分の意見が通るように交渉していたのです。
ナルシストとサイコパスは譲歩しない
また、ナルシシズム傾向やサイコパシー傾向は、回避スタイルや自己譲歩スタイルをあまりとらないこともわかりました。
回避スタイルは、話し合いから逃げたり話をそらすようなことです。自己譲歩スタイルは、こちらから譲歩して相手の意見を取り入れる交渉方法です。
マキャベリストの人は時には妥協したり、相手と意見を統合する(相手と自分の意見を合わせる)こともあるのですが、ナルシストやサイコパスの人はあまりしないのです。
こうしてみると、ナルシストやサイコパスとの交渉は厄介になりやすいことがわかりますね。
決して自分から譲歩はしない
この研究結果は、ダークトライアド傾向が高い人は、基本的には対人葛藤時に強制的に相手を言いくるめるような戦術をとっていることを示しています。
一方で、時には自分の意見と相手の意見を合わせてまとめたり、お互いに妥協したりするような方略をとることもあります。
ただし、ナルシストやサイコパスに関しては、完全に相手の意見に譲歩したりあるいは妥協したり、また対人葛藤を回避したりするようなコミュニケーションはとらない傾向にあります。
またいずれのダークトライアドでも、自分から譲歩はせず、マキャベリストだけが相互に妥協する戦略を用いることがわかりました。
というわけで、妥協するにしても彼らは自分からするのではなく、相手が妥協して初めて妥協するのです。
マキャベリストの交渉方法
今回の研究結果から、マキャベリズムが高い人は、他の2つのダークトライアド特性に比べて、より柔軟に葛藤解決を行うことが明らかになりました。
これは何もマキャベリストがよりまともであるという証拠ではなく、マキャベリズムが高い人は、自己中心的な目的を達成するためにあらゆる手段を用いる傾向があるということを示しています。
なんとなく、手段を選ばないのはサイコパスがやるイメージですが、意外にもマキャベリストのほうがその傾向があったのですね。
サイコパスの交渉方法
もちろんサイコパシー傾向が高い人も、様々な手段で他者を操作しようとするのですが、マキャベリストと比べると彼らはより不適応的な戦略で揉め事に対処してしまいます。
対人葛藤場面のような対人ストレス状況下においては、サイコパスの人は実力を発揮しにくいのかもしれません。サイコパスは交渉が苦手と言ってもいいですね。
アメリカのサイコパス人口は4%で、日本は人口の1%。日本の方がサイコパスが少ないのは、人口の流動性が少なく閉ざされた生活空間になりやすいために衝動的な性格であるサイコパスが繁栄しにくいからだ。
そういう空間では、悪さをすればすぐに噂が広まり、集団から追い出され、生きていけない。
— 心理学を解説する ちょっぺ〜先生 (@kruchoro) 2018年11月5日
ナルシストの交渉方法
最後に、ナルシシズム傾向が高い人は、他者操作方略の中では自己優越的な感情操作のみを行い、かつ強制スタイルを用いて対人葛藤解決をすることから、他者操作場面や対人葛藤場面において他者との齟齬を生じやすくなります。
つまり、ナルシストの人は態度も悪いうえに交渉ごとでも折れないため、対人関係で問題を抱えやすいのです。ナルシシズム傾向が高い人は気を付けたいところです。
こうして並べてみてみると、ダークトライアドとひとくくりに言っても、それぞれに抱えやすい問題や特徴は異なっていることがわかりますね。
イメージとしてはどのタイプもパワハラ上司という感じで気難しそうですが。
参考論文
Dark Triad と戦略的な対人行動――他者操作方略と対人葛藤方略に着目して――
http://ci.nii.ac.jp/naid/120006230472
https://www.waseda.jp/flas/glas/assets/uploads/2017/03/2017_3_psychology_smt.pdf