体内時計の移動
以前に私たちのクロノタイプは生涯で一定ではないという話をしました。
生まれたばかりの赤ちゃんは一日中寝ていますし、老人や子供は早起きです。そして思春期になると夜更かしになります。
10代の身体が思春期を迎えると、概日リズムは基本的に3時間後ろに移動します。
つまり、朝起きるのも夜眠るのも3時間遅くなるのです。
すると突然、夜の9時や10時にベッドに就くことは、子供にとってひどく退屈に感じるようになるだけではなく、生物学的にも不可能な行動に近くなります。
思春期が眠るのは夜の11時から
また、眠気を引き起こすメラトニンというホルモンの分泌タイミングも変わります。
世界中のティーンエイジャーを対象とした研究では、思春期の脳みそは夜の11時頃までメラトニンの放出を開始せず、日の出を過ぎてもホルモンを放出し続けていることが分かっています。
一方で、大人の場合は、目が覚めるときにはメラトニンはほとんど分泌されていません。
なので、例えば、朝の8時前に起きなければならない10代の若者は、メラトニンが血流に乗って急増しているために注意力を失い、身体の要求に屈して眠りについてしまうことが多いのです。
これはかなりつらいです。睡眠薬を飲んだ状態で「さっさと起きて仕事に行け!」と言っているようなものですからね。
慢性的な睡眠不足の若者たち
この体内時計と実際に活動する時間の差のせいで10代の若者は慢性的な睡眠不足に陥っていると言われています。
概日リズムが夜型に変化したティーンエイジャーに、早朝の教室で学習し高いパフォーマンスを発揮するように求めることは、海外に出かけて瞬時にその国のタイムゾーンに適応して働いてください、と言っているのと同じです。
普通は時差ボケを治すために時間を調整しますよね。国の間に大きな時差がある場合にはなおさらです。
しかし、若者はそれを数年間、平日は毎日強制させられているのです。
若者の体内時計に合わせて活動時間を遅めに移動することは、若者の自殺率やうつ病の発症率、また交通事故や暴行事件などの発生率を下げることにもつながります。
若者に朝早く起きるように言うのは無駄なだけではなく害悪なのだと心得ておきましょう。
参考資料
The Science of Internal Time, Social Jet Lag, and Why You’re So Tired
https://www.brainpickings.org/2012/05/11/internal-time-till-roenneber/
Sleep and the Teenage Brain
https://www.brainpickings.org/2013/07/17/sleep-and-the-teenage-brain/