悪夢は脳みそのストレス処理機能のひとつ
アメリカのボストン大学医学部神経学部で夢の研究をしているパトリック・マクナマラ准教授によると、夢にはストレスや強い感情を処理する効果があることがわかっています。
私たちは激しい感情、特に否定的な感情を感じた時に、レム睡眠や夢を利用して、そういった感情を処理してストレスが溜まらないようにしているのです。
以前、新型コロナウイルスのパンデミックが起きたことによって悪夢が増えたと話しましたが、私たちはストレスや不安を感じると、それらを処理するために頻繁に悪夢を見るようになるのです。
夢はお酒やドラッグで酩酊しているのと同じ状態
マクナマラ博士によると、夢を生み出す神経生物学的な信号と反応は、幻覚剤で引き起こされるものに近いと言います。
LSDなどの幻覚剤は「セロトニン5-HT2A」と呼ばれる神経受容体を活性化させることで神経を興奮させて幻覚を見せていることがわかっています。
このセロトニン受容体が活性化すると、脳の「背側前頭前野」と呼ばれる部分が働かなくなります。
すると、自分の意識で感情が抑えられなくなる状態になります。これは、感情的脱抑制と呼ばれています。お酒を飲んで酔っぱらうと感情的になるのもこのためです。この状態が、夢を見ているとき(レム睡眠)の状態と同じなのです。
夢の内容がやたらと突飛なのは幻覚作用に近いからだったのですね。
しかもこのプロセスは毎晩起こっているのです。たいていの場合、私たちは見た夢を覚えていませんが、どんな人でもきちんと毎晩夢を見ているのですね。
ストレスが多いほど悪夢を見やすくなる
しかし、現在は新型コロナウイルスのパンデミックのよって孤独やストレスを感じることが多くなり、夢を覚えていることが多くなっている可能性があります。
不安や運動不足といったことは、睡眠の質を低下させることがわかっています。また睡眠の質が低下して、睡眠の途中で頻繁に目が覚ますようになると思い出せる夢も増えます。
悪夢が増える流れ
まとめると、悪夢は以下の流れで見るようになるということです。
- 新型コロナウイルスで不安やストレスや運動不足の状態が増える
- ストレス解消のために夢の内容は悪夢に近くなる
- 睡眠の質が低下して夢を思い出しやすい状況になる
- 悪夢を見ていたことを覚えていて、悪夢の報告が増える
といった流れになっているのです。というわけで、睡眠の質が低下していたり悪夢を頻繁に見て困っている人は、これまでの生活ではしていなかったストレス対策や新しい運動習慣を取り入れましょう。
頻繁に悪夢を見るようならば、それは肉体の不調の合図なのです。きちんと対処していきましょう。